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投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業連合による東芝へのTOB(株式公開買い付け)が成立した。年内にも上場廃止となる。
東芝をめぐっては同社株を保有する「物言う株主」との対立が激化し、経営の混乱が続いてきた。株主構成を大きく変更するTOBの成立を受け、株主との対立を解消して事業構造改革を加速してほしい。
同社は経営危機を乗り切るため、すでに家電や半導体メモリーなどの主力事業を売却している。経営再建を担う新規事業の育成が急務である。
一方で経済安全保障の視点も忘れてはならない。同社は原発や量子暗号など安全保障に欠かせない高度な技術も抱えている。海外への技術流出を防ぎつつ、今後の確かな成長につなげる戦略が問われる。
株主によるTOBの応募比率は78・65%で、TOB成立に必要な66・7%を上回った。TOB成立を受けて東芝の島田太郎社長は「新しい株主のもと、新たな未来に向けて大きな一歩を踏み出す」とコメントした。
まずは省電力化に不可欠なパワー半導体や再生可能エネルギー、インフラ関連などの既存事業を強化する。必要に応じて分社化した事業を再統合するなど、柔軟な事業構造改革に取り組むべきだ。
今回のTOBに参加した国内企業連合には、大手電力の中部電力や半導体関連のロームなどが名前を連ねている。こうした企業とも協業を図り、TOBで得た資金で将来の成長に資する投資も積極化してほしい。
不正会計の発覚や米原発子会社の破綻で、東芝は経営危機に陥り、海外を中心とした投資ファンドに出資を仰いだ。これで一時的に経営は持ち直したものの、株主還元を求める株主と経営陣の対立が長期化し、経営は混乱状況に陥っていた。
そうした閉塞(へいそく)状況を打開するため、TOBが成立したことは意義がある。だが、東芝が本格的な経営再建を果たすためには企業統治を強化し、透明性のある経営改革に取り組まなければならないのは当然だ。
TOBを主導したJIPは、数年後の再上場を視野に入れるが、国内企業連合との思惑の違いも指摘されている。実のある経営改革を実現できなければ、再上場もおぼつかない。
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2023年9月24日付産経新聞【主張】を転載しています