~~
10年総額7億ドル(約1015億円)といわれても、それがどういう金額なのか。想像もつかない。東京スカイツリーが2・5本建てられると聞いては、ますます分からない。
大リーガー、大谷翔平の新天地がドジャースに決まった。契約金の総額は全世界のスポーツ史上最大の契約という。
下位にサッカーのメッシやC・ロナルド、アメリカンフットボールのマホームズらの名前が並ぶのをみれば、そのすごさがようやく、少し分かる。これはとんでもないことなのだ。
野球日本代表の井端弘和監督は「スポーツ競技(の契約)で野球がトップとなり、それが日本人の大谷選手というのは誇りに思う」と話した。このコメントが全てではないか。
野球に関心が薄い欧州でも、この異次元の大型契約によって大谷はスーパースターとして認知される。プロスポーツ選手にとって契約は、ただの金額ではなく評価そのものだからだ。
ドジャースといえば、野茂英雄が先駆者として入団した球団だ。当時、日本球界は野茂の渡米に猛反発した。松井秀喜もヤンキース入りを決めた際には自らを「裏切り者」と呼んだ。
今では隔世の感があるが、その野茂や松井の活躍や、米国であらゆる安打記録を塗り替えたイチローのバットが国内の野球界のみならず、米国内の空気も変えてきた。そうした歴史の上に、日米球界を驚かせ続けた大谷の二刀流の成功がある。
サッカーやバスケットボールでも欧州各国や米国で活躍する日本選手らの躍動があり、これらはいい意味で影響し合い、無関係ではない。
戦う場を常に大きく求め続ける日本選手らのありようは、必ず子供たちに好影響を与えるだろう。
移籍にあたり大谷は「選手生活の最後の日まで、ドジャースのためだけでなく、野球界のために前向きに努力し続けたい」とコメントした。
どこまでもスケールが大きく、またそうした姿勢は、すでに明らかにした日本全国の小学校へのグラブのプレゼントでも明示されている。
巨額の契約も、必ずや意味ある使途を探り続けるだろう。今後も同時代を生きる大谷の存在に驚愕(きょうがく)し、一喜一憂できることに感謝し続けたい。
◇
2023年12月12日付産経新聞【主張】を転載しています