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大阪国際女子マラソンで、前田穂南が2時間18分59秒の日本新記録をマークした。
19年前に野口みずきが樹立した19分12秒を更新し、初の18分台に突入した。
前田はレース前から目標を「アレ」と言い続けた。兵庫県尼崎市の出身らしく優勝の目標を「アレ」と口にしてきた阪神の岡田彰布監督にならったものだ。
今夏のパリ五輪への女子マラソン枠は残り1つだが、前田の「アレ」は代表条件の21分41秒以内ではなく日本記録のことだと母には事前に告げていた。
常識破りの展開だった。高速レースを先導するペースメーカーを21キロで置き去りにし、単独で飛び出した。31キロ過ぎでエチオピアのエデサにとらえられたが、離されることなく、追い続けた末の快記録である。
2001年、高橋尚子が女子では世界で初めて20分の壁を破り、04年の渋井陽子、05年の野口が続いた。これらは全て、比較的平坦(へいたん)で男女混合のベルリン・マラソンの記録だ。以来記録は伸び悩んだが、昨年1月、新谷仁美が男女混合のヒューストン・マラソンで野口の記録に迫る19分台で走った。
誰かがふたをこじ開ければケチャップはドバドバ出てくる。前田の記録はそんな過程にあり、加えて国内の女子単独レースでマークしたところに真の価値がある。3月の名古屋ウィメンズマラソンで五輪代表が決まるが、前田の記録を上回ることが条件となる。こうして全体の競技力が向上していく。
世界の女子マラソンは11分台まで記録を伸ばしているが、女子単独レースでの18分台は、トップに手が届くタイムといってよく、さらなる常識破りを五輪本番で期待したい。
同じ1月28日、卓球の全日本選手権が最終日を迎え、パリ五輪を戦うシングルスの男女代表選手が内定した。注目の女子では優勝した早田ひなと、平野美宇が代表入りを確実とし、東京五輪のエース、伊藤美誠は選考ポイント3位に甘んじた。
同年の3人は幼少時から切磋琢磨(せっさたくま)を続け、16年リオデジャネイロ五輪では平野が、21年東京五輪では早田が補欠として、伊藤ら代表選手を支えてきた。伊藤が団体戦要員として代表に加わるかは未定だが、こうしたドラマが全ての競技にある。その集大成がオリンピックだ。
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2024年1月30日付産経新聞【主張】を転載しています