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「日本が世界本社になれるか」。米鉄鋼大手USスチールを約141億ドル(約2兆円)で買収する決断をした日本製鉄の橋本英二社長は自社のグローバル戦略の要諦をこう説明する。11月に米大統領選を控え、日鉄の提案に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)の支持獲得の思惑から政治問題化しているこの買収には、日本の鉄鋼業が国際競争を勝ち抜くための条件という意味があり、頓挫すれば中国が利を得る構図が透ける。
2023年の世界の鉄鋼生産(粗鋼生産量)をみるとトップの中国が10億1908万トンで、4年連続の10億トン超え。少子高齢化が進み内需が縮む日本は、中国の10分の1以下の8700万トンと5年連続の1億トン割れで、海外需要の拡大を背景にピークを記録した07年に国内に28基あった主要生産設備の高炉は、各社の供給力削減で昨年末に20基に減った。1億4020万トンと3年連続で過去最高だったインドとの差も拡大。橋本氏は今後も「残念ながら日本の内需は増えない」と話す。
ただ、国内生産にこだわらず海外から輸入すれば済むと考える人は、日本が使う鉄鋼の供給や価格に対し最大生産国の中国の影響力が増すリスクを想像してほしい。鉄は自動車や家電、住宅など暮らしのインフラを支える基幹素材だ。国内生産は経済安全保障の観点で欠かせず、品質やコストなどの技術力は製造業全体の競争力にも直結する。
筆者:池田昇(産経新聞経済部編集委員)
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2024年3月24日付産経新聞【日曜経済講座】より