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年率換算で2・0%減となった1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、個人消費の弱さが端的に表れたものである。
マイナス成長は2四半期ぶりだ。新型コロナ禍からの回復過程にあるとはいえ、GDPの大層をなす消費が盛り上がらなければ、経済は一進一退から抜け出せまい。日本経済は今、持続的な成長を果たせるかどうかの岐路にある。
急激な円安が輸入物価の上昇を通じて家計や企業活動に及ぼす悪影響には引き続き警戒が必要だ。一方で今後は、春闘でみられた賃上げの効果も本格化しよう。物価高に賃上げが追い付かない状況がなくなるかどうかが消費回復のカギを握る。
重要なのは、企業の前向きな経営で民需主導の力強い景気回復を実現することだ。中小企業を含めて賃上げを確実に果たすべきはもちろん、収益増をもたらす設備投資や人への投資も求められる。そのための歩みをさらに強めるべきである。
1~3月期の個人消費は前期比0・7%減だった。トヨタ自動車グループの認証不正に伴う生産停止で新車購入が減る特殊要因もあったが、物価高で実質賃金が3月まで24カ月連続でマイナスとなり、購買力が低下していることはやはり大きい。
賃上げに加えて、6月には所得税と住民税の定額減税も始まる。折からの円安や原油高が所得改善効果を減じる面もあろうが、実質賃金がプラスに転じれば大きな潮流変化となる。
企業には1~3月期に0・8%減だった設備投資も積極化してほしい。上場企業の令和6年3月期決算では、円安を追い風に業績を大幅に伸ばす企業が相次いでいる。海外で稼ぐ製造業だけでなく、インバウンド(訪日外国人客)需要の高まりで恩恵を受ける企業も多い。
生産性を高めたり、成長分野を育成したりするための投資は中長期的な経営基盤の安定化に資する。これらを通じて企業が稼ぐ力を高め、経済の好循環につなげていくことが重要だ。
一方、このところ一段と進んでいる円安を巡っては、円高へと反転させ得る日銀の利上げ時期についても取り沙汰されることが多い。だが、経済に弱さがみられる現段階で利上げを急げば景気を冷やす恐れもある。経済の転換期の金融政策には慎重な判断が求められよう。
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2024年5月17日付産経新聞【主張】を転載しています