安倍晋三首相は4月26日午後(日本時間27日午前)、米ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。両首脳は、北朝鮮の完全非核化に向けて経済制裁を維持するなど連携を強化するほか、北朝鮮による拉致問題の早期解決の重要性を改めて確認。首相は「次は私自身が金正恩・朝鮮労働党委員長と向き合い、解決する」と述べ、日朝首脳会談の実現に向けた米側の協力を求めた。これに対し、トランプ氏は「全面的に協力する」と表明した。
北朝鮮の完全非核化は世界の平和にとって欠かせない喫緊の課題だ。拉致問題の解決は日本にとって最重要課題である。日米両国は同盟の総力を挙げて取り組まなければならない。
北朝鮮は、拉致という国家犯罪をおかしたにもかかわらず、ほおかむりしたままだ。核・ミサイル戦力の保有にこだわり、金正恩朝鮮労働党委員長がプーチン露大統領と会談するなど中露の後ろ盾を固めようと必死である。
日米両首脳は、米朝交渉の今後の進め方について、突っ込んだやりとりを行った。米ホワイトハウスの声明にあるように「北朝鮮の最終的で、完全に検証された非核化を達成するため」の話し合いである。
重要なのはトランプ氏の拉致問題への全面協力の表明だ。北朝鮮の独裁者に拉致問題の解決なくして自国の未来はないことを改めて認識させるものだ。
トランプ氏は日本との貿易交渉について、農産物関税をなくすことなどを首相に求め、5月中の協定妥結に期待感を示した。
米国は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱したせいで牛肉や豚肉などの対日輸出で不利な条件を強いられている。
それが米農家の反発を招いていることに焦りがあるから、早期妥結にこだわっている。TPPの水準を超えるような過大な要求を控えているのも、交渉をもつれさせたくないためだろう。
気をつけたいのは農業分野で前のめりになることである。首相は「双方にとって利益となるよう交渉を進めたい」と述べた。日本車への輸入数量規制などを断念させないうちに、米国に成果を約束するわけにはいかない。
中国問題は今回の会談で主要議題とならなかった。国際社会で中国が建設的な役割を果たすよう日米が連携していくことを確認しただけでは不十分だ。安全保障、通商などあらゆる分野で、価値観の異なる中国にどのように対処していくかを5、6月に予定される日米首脳会談で突っ込んで話し合うべきだ。