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紅葉に包まれた〝一枚〟を求めて晩秋の北海道へ。札幌から車を走らせること約50分、秋色に染まる定山渓(じょうざんけい)温泉にたどり着いた。「札幌の奥座敷」と呼ばれ、渓流の両岸に数々の温泉施設が立ち並ぶ景勝地だ。
札幌市南区に位置する定山渓は、中心を流れる豊平川を囲むように、サクラやカエデ、モミジなどの木々が赤や黄色に染まる。
札幌の都心部から30キロ弱とアクセスがよく、年間に約250万人が訪れる。支笏洞爺(しこつとうや)国立公園内にあり、良質な温泉が旅人を癒やす。
豊平川の川底から自然湧出する約80度の源泉は、無色透明のナトリウム塩化物泉。毎分8600リットルと豊富な湯量を誇る。
開湯は慶応2(1866)年、後に「定山渓」の名の由来となる修験僧・美泉(みいずみ)定山がアイヌの人々の案内で泉源に出合い、病気やけがに苦しむ人々を救おうと湯治場を拓(ひら)いたのが始まりという。定山は温泉へ通じる道の開削に奔走するなど、定山渓の開発と発展に尽力した。その熱意は、いまなおこの地に受け継がれている。
訪れた10月下旬は、紅葉も終盤を迎え、散り始める木々も。風雨の強い日もあり、季節が移ろい、冬の足音を感じる撮影になった。
11月に入ると、低木に縄をかけて雪の重みで枝が折れないようにするなど、冬支度が始まる。雪に覆われた定山渓も魅力的だ。
「政令都市にありながら、自然を利用したアクティビティーのフィールドとしても楽しめる。大自然を感じて英気を養ってほしい」と定山渓観光協会の橘真哉さん(53)。
取材を終えて空港へ戻る途中、渓谷を望むお湯につかり体をほぐした。枝先からひらひらと落ちてゆく木の葉を眺めながら、定山の情熱に思いを馳(は)せた。
筆者:川村寧(産経新聞写真報道局)
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2024年11月5日産経ニュース【水辺の物語】を転載しています
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