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A school classroom (graphic design)

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令和5年度に不登校だった小中学生が過去最多の34万6482人に上った。11年連続の増加で、30万人を超えたのは初めてだ。

子供たちを学校教育から遠ざけてはならない。文部科学省と各地の教育委員会は、抜本的な対策の検討が急がれる。

文科省が全国の国公私立校を対象に行った調査によると、5年度に年間30日以上欠席した小学生は13万370人、中学生は21万6112人で、いずれも前年度より2万人以上増えた。全ての児童生徒に占める不登校の割合は3・7%(前年度3・2%)で、35人学級のクラスに1人以上いる計算である。

特に心配なのは、低学年になるほど増加幅が大きいことだ。過去2年間で小学2年生の不登校は1・88倍に、1年生は2・02倍に急増した。

小学校の事業風景

いじめの被害者が長期欠席するなど「重大事態」も過去最多だった。文科省と各教委は、深刻に受け止めるべきだ。

不登校が急増した要因には、新型コロナ禍の影響などで生活リズムが崩れたことや、保護者らの意識が変化したことが指摘される。平成29年施行の「教育機会確保法」で、学校以外での多様な学びを支援する方針が示されたこともあり、「無理して学校に行く必要はない」という意識が急速に広まった。

29年度に14万4031人だった不登校は、同法施行後の6年で20万人以上も増えている。同法が示した方針が適切だったのか、根本から見直す必要があるのではないか。

社会問題を討論する中高生ら(共同)

教員が児童生徒の状況を把握していない懸念もある。

文科省は今回、不登校の原因を探るため、教員を対象に児童生徒からの相談内容を複数回答で調べた。結果は「学校生活に対してやる気が出ない」が32%で最も多かった。

児童生徒はさまざまな事情を抱えている。「やる気」に責任をかぶせても、効果的な対策は十分には立てられまい。家庭訪問などでより詳細な状況把握に努めるとともに、教員の質を高める取り組みが重要である。

学校が果たす役割は、学習面だけではない。集団生活の中で子供たちは、嫌なことやうれしいことを体験しながら、人との関わり方を身につけていく。「行く必要はない」という意識を蔓延(まんえん)させてはならない。

2024年11月13日付産経新聞【主張】を転載しています

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