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石破茂首相が南米ペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と初めて会談した。
日中両国が戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ安定的な関係を構築する方向性を確認した。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を理由に中国側が全面停止した日本産水産物輸入の再開合意の着実な履行を申し合わせた。
石破首相は会談後、記者団に「非常にかみ合った意見交換だった印象だ」と満足そうに語った。習氏と会談を重ねていくことで一致したと明かし、「首脳間を含むあらゆるレベルで意思疎通、往来を図り、懸案を減らしていく」と語った。
「かみ合った」と本気で感じたのであれば、石破首相の外交感覚はピントがずれていないだろうか。
また、首脳間の往来が習氏の国賓としての来日を含むのであれば許されない話だ。習氏はウイグル人などへの深刻な人権弾圧の責任者だからだ。
石破首相は習氏に対し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、東シナ海情勢や領空侵犯など中国軍の活動に深い憂慮を表明した。深圳での日本人児童殺害を取り上げ、現地日本人の安全確保を求めた。拘束されている日本人の解放も求めた。
習氏の態度は、ほぼゼロ回答だった。「日本人を含む全外国人の安全を確保する」と述べたが、それは国家として当たり前の話にすぎない。水産物の輸入再開は実現の時期さえ示さなかった。これで「かみ合った」と語るセンスを疑う。
懸案を抱える中でも共通の利益の拡大を図るのが戦略的互恵関係だという。岸田文雄前首相が昨年の習氏との会談で6年ぶりに復活させた。だが、今の日中はそのような関係を推進できる間柄なのか。
習氏は、来年登場する米国のトランプ政権を警戒し、日米が協力して中国に厳しい対応を取らないように対日姿勢を一時的に調整しているだけだろう。
中国共産党政権の首脳は全員、力の信奉者だ。日本が防衛力や経済力、科学力などの国力を高めたり、日米同盟の結束を強めたりすることが、対中発言力を増すことになる。その努力なしに、首脳の往来で握手を重ねても、日本の平和と安全、国益は確保できないと石破首相は肝に銘じてもらいたい。
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2024年11月17日付産経新聞【主張】を転載しています
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