UK joins TPP

英国の加盟を承認したTPP閣僚級会合で記念写真に納まる各国の閣僚ら=2023年7月、ニュージーランド・オークランド(共同)

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英国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟を認める議定書が発効した。2018年に日本など11カ国で発足した後、初めての新規加盟である。

これにより環太平洋地域だけだったTPP加盟国は欧州にも広がった。トランプ米政権が発足すれば、米国のみならず世界的に保護主義が強まる懸念がある。自由で公正な経済圏を世界に広げる意義は大きく、英国加盟の発効を歓迎したい。

ジュリア・ロングボトム駐日英国大使=東京都千代田区(鴨川一也撮影)

英国を含むTPP12カ国の経済規模は世界の国内総生産(GDP)の15%に当たる。欧州連合(EU)を離脱した英国にとって、TPP諸国を含むインド太平洋地域との連携強化は成長を後押しする基盤となろう。

日英2国間には既に経済連携協定(EPA)があり、英国のTPP加盟が日本に及ぼす経済効果は限定的とみられるが、経済にとどまらない地政学上の重要性にも目を向けるべきだ。

経済、軍事の覇権を追求する中国やロシアなどの専制主義国と対峙(たいじ)する上で、距離的に離れたインド太平洋地域と欧州のシーパワーである英国が経済的に結びつきを強めることは安全保障の観点からも意味がある。TPPには元来、不公正な貿易慣行をやめない中国とは異なる通商秩序を構築する狙いがあったことも想起しておきたい。

ロンドンを象徴するビッグベンと英国国旗(ロイター)

英国に続く新規加盟国の拡大も課題である。11月末には中米コスタリカとの加盟交渉を始めることが決まった。ほかにも台湾やウクライナ、インドネシアなどが加盟を申請している。

TPPによる高水準の関税撤廃や先進的ルールを世界標準にするためにも加盟国の輪を広げることは重要だ。やっかいなのは中国も加盟を申請していることである。認めれば台湾加盟の道は閉ざされかねない。

中国・上海市で開かれた総合見本市「中国国際輸入博覧会」の会場=11月7日(三塚聖平撮影)

もっとも、中国は国有企業の優遇などさまざまな面でTPPの水準を満たしておらず、加盟を認めるわけにはいかない。他の加盟国が中国の経済力への期待から安易に容認に傾くことがないよう、日英などは各国への働きかけを強めるべきだ。

TPPは最近、ルール見直しの一環で経済的威圧や市場歪曲(わいきょく)的な慣行への対応なども検討している。これらは中国が批判されることの多い問題だ。日本は議論を主導したい。この点でも自由や民主の価値観を共有する英国との連携は重要だ。

2024年12月17日付産経新聞【主張】を転載しています

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