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ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が昨年末の記者会見で、2024年の国内総生産(GDP)は前年比4%増になりそうだと述べて経済運営に自信を見せた。
プーチン氏は、国民の実質賃金は年9%の伸びで、失業率は2・3%の歴史的低水準にあるとも語った。購買力平価でみたロシアの経済規模は日本を抜いて世界4位だとも豪語した。
だまされてはいけない。露経済は軍需生産に引っ張られて数字上は伸びているが、民業が圧迫され、成長の持続可能性は失われつつある。戦時経済とはそのようなものだ。米欧日の対露制裁は効いている。制裁強化を続け、プーチン政権を追い詰めねばならない。
露中銀はインフレを抑えようと大幅な利上げを続け、昨年10月には政策金利を21%に引き上げた。高金利が企業活動の支障になっていると産業界から強い不満が上がっている。
昨年のインフレ率は9%超だったとみられ、一般庶民の懐を直撃している。露通貨ルーブルは11月に対ドルで15%下落し、侵略後最安値の水準にある。
経済の弱体化を招く大きな要因は、侵略戦争による労働力の不足である。もともと人口動態の面で若年労働力が足りていなかったが、侵略戦争で75万人とされる死傷者が出ている。戦争を忌避して国外に脱出したロシア人も、高学歴の若年層を中心に65万人と推計されている。
露軍事費は過去最多を更新し続け、今年の予算では歳出の3分の1を占める。労働力は軍需産業にとられ、他分野は賃金上昇と人手不足に悩む。公共交通機関の運行に支障が出ている地方もある。
軍需投資の大半は兵器や砲弾として戦場で消える。表面的な好況を演出できる戦時経済は独裁者に好都合だろうが、侵略を続ける限り、まっとうな発展の展望がないことは明白だ。
ロシアは石油・天然ガスを高値で売れず、軍需物資の調達に苦労している。ただ、抜け穴が多く、それを塞ぐ努力が不可欠だ。ロシアが石油輸出に使っている闇タンカーや、露軍需産業と関わりを持つ第三国企業にも制裁の網を広げることが急務だ。トランプ次期米大統領が唱える石油増産は国際価格を押し下げ、露の石油収入を減らす手段として有効であろう。
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2025年1月9日付産経新聞【主張】を転載しています
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