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石破茂首相が、マレーシアとインドネシアを訪問し、海洋安全保障分野の連携強化で両国と一致した。
マレーシアとインドネシアは、ともに東南アジア諸国連合(ASEAN)の中核となる民主主義国であり、中国が軍事拡張を進める南シナ海の沿岸国である。
南シナ海の安定は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現と不可分だ。中国への対処を念頭に置いた両国との連携強化は妥当である。
マレーシアは今年のASEAN議長国を務める。石破首相は同国のアンワル首相と戦略安保対話の促進や海上保安機関の協力強化などで合意した。
ASEAN最大の経済・人口を有するインドネシアでは、昨年10月に就任したプラボウォ大統領と会談した。高速警備艇の無償供与や年内の外務・防衛閣僚会合開催のほか、行政官らの人材育成支援に合意した。
石破首相訪問の直前には中谷元・防衛相もインドネシアを訪れ、護衛艦の共同開発をめぐる協議再開で一致した。
マレーシア、インドネシア両国は中国と海洋権益などの問題を抱える一方、経済面での接近を強めている。
インドネシアは、中国やロシアなどが主導するBRICSへの加盟を発表した。マレーシアも加盟を申請中だ。こうしたASEAN各国の対中傾斜を食い止めることは重要だ。
石破首相は、アンワル首相との会談で「日本外交にとって東南アジアとの連携強化は最優先課題のひとつ」と述べた。
そうではあるが、石破首相が今の時期に実現すべき会談は、ほかにあったのではないか。
1月20日の大統領就任式典前の打診を受けながら、石破首相が先送りしたトランプ次期米大統領との会談である。
中国やロシア、北朝鮮という専制国家の脅威やウクライナへの支援継続、内政の混乱が続く韓国情勢などについて、石破首相はトランプ氏と一日も早く会って協議を行い、認識を共有すべきだ。
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収をめぐり、これを阻止しようとする米国と日本はぎくしゃくした状態にある。この状態を長引かせてもいけない。強固な日米同盟が日本の平和と安定の基盤であることを忘れてはならない。
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2025年1月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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