岩手県大船渡市で発生した山林火災は、2月28日も消火活動が続いている。三陸沿岸特有の強風と乾燥によって樹木の葉の部分まで焼ける「樹冠火」に発展し、大規模化したという。
Ofunato forest fire February 27 2025

岩手県大船渡市の山林火災で延焼が続く山肌=26日午後8時42分

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岩手県大船渡市で発生した山林火災は、2月28日も消火活動が続いている。大船渡市と隣接する陸前高田市で出火が相次いでおり、専門家は平成29年に釜石市の尾崎半島で発生した事例との類似点を指摘している。三陸沿岸特有の強風と乾燥によって樹木の葉の部分まで焼ける「樹冠火」に発展し、大規模化したという。

1日で1年分の被害

総務省によると、大船渡市で26日午後に発生が確認された山林火災は約600ヘクタールを焼き、同日午後10時40分時点で少なくとも84棟が被害を受けた。

山林火災があった岩手県大船渡市の綾里小学校付近=2月26日午後3時ごろ(同市提供)

林野庁によると、山林火災による全国の合計焼損面積は、平成30年から令和4年までの5年間で年平均657ヘクタールとなっており、わずか1日で日本全体における1年分の被害と同規模となった。

京都大学防災研究所の峠嘉哉特定准教授は「特に昨年12月以降で総降水量が平年値よりかなり低い傾向が続いていた」と分析する。峠氏は平成29年5月に約400ヘクタールが焼けた釜石市の山林火災について調査した経験を持つ。

岩手県大船渡市の山林火災現場=2月26日午後5時45分

峠氏は「出火当日の最大瞬間風速は釜石市の事例で毎秒25・9メートル、大船渡では毎秒18・1メートルだった」とし、「地表の落ち葉などが燃える地表火から、木の葉の部分にまで火が到達して延焼する樹冠火に発展した可能性がある」と指摘した。

山林火災の消火活動を行うヘリコプター=2月27日午前9時7分、岩手県大船渡市

「乾燥の傾向や強風は東北の三陸地方など、より広域で共通している。出火要因の多くは人為的な要因なので、火の取り扱いには注意が必要」と警鐘を鳴らした。

復旧に5年、海産物への影響も

釜石市の山林火災では、植樹などの復旧事業に取り組んだ対策協議会が解散されるまでに約5年を要した。新しい苗が伐採できるようになるまで40~50年かかるとみられている。土砂や焼けた木が山から海に流出し、海産物への被害も懸念されるため、土地の整備なども併せて進められた。

岩手県大船渡市の山林火災現場=2月27日午前10時22分
山林火災の消火活動を行うヘリコプター=2月27日午前9時52分、岩手県大船渡市

筆者:高木克聡(産経新聞)

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