
北京の天安門広場につながる道路を警戒する治安当局者=6月4日(共同)
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中国共産党政権が、北京の天安門広場に集った学生らの民主化運動を武力鎮圧して多数の死傷者を出した天安門事件から6月4日で36年を迎えた。
共産党政権は事件を「反革命暴乱」と規定し、言論の抑圧で事件の存在そのものを葬ってきた。
遺族の会「天安門の母」は今年もホームページで「当時の政府と為政者によって引き起こされた、世界で最も凄惨(せいさん)な大虐殺」の真相究明と責任追及を訴えた。
世界各地では追悼集会が開かれた。だが、香港では2020年に香港国家安全維持法(国安法)が施行されて以降、事実上禁止されたままだ。
高齢の遺族は亡くなりつつある。その無念さを思うと身につまされる。中国共産党政権の人権蹂躙(じゅうりん)と隠蔽(いんぺい)体質は、容認できない。習近平政権は事実を公開し、犠牲者・遺族へ謝罪しなければならない。
習政権はトランプ米政権の関税政策にみられる米国第一主義を批判し、「国際的な公平と正義を守る」と、世界秩序の守護者のごとく振る舞っている。偽善ぶった態度は目に余る。
新疆ウイグル自治区やチベット、香港における人権弾圧は習政権下で徹底された。東・南シナ海の海洋覇権や台湾併吞(へいどん)を狙った威圧行為も激化している。

「6月4日」を機に世界が認識すべきは、中国共産党政権の非人道性や強権性は36年前と変わっていないことである。
気になるのは石破茂政権の宥和(ゆうわ)的ともいえる対中姿勢だ。
日中両政府は戦略的互恵関係の推進で一致している。米国との対立で優位に立とうと日本に送る外交的な微笑に惑わされていないか。
最近では、中国の海警局船から飛び立ったヘリコプターが尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領空を侵犯したが、石破政権の姿勢は腰が引けていた。
忘れてはならないのは、天安門事件後、国際的孤立に追いやるのは不適当として共同制裁に反対した当時の日本政府の失態だ。中国は世界貿易機関(WTO)加盟をテコに世界市場を席巻し、巨大な軍事力を築いた。責任は日本にもある。
石破政権は天安門事件の真相究明を改めて訴えるべきだ。習氏の国賓としての来日はもってのほかである。
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2025年6月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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