
韓国・ソウルの国会で行われた就任式後、広場に集まった市民に向けて両手でハートマークを作る李在明大統領=6月4日(聯合=共同)
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韓国の新大統領に、親北・反日傾向が強い革新系政党「共に民主党」の李在明前代表が就任した。
李氏は就任演説で、「堅固な韓米同盟を土台に韓米日協力を強固にする」と述べたが、本当にこれに沿った政策を進めるのか、懸念を抱かざるを得ない。
李氏は大統領選の選挙公約で、元慰安婦の資料についてユネスコの「世界の記憶」への登録を目指すとした。問題解決へ新しい財団を設立し、戦時女性の人権問題で国際的な連帯を目指すとの考えも明かした。
選挙期間中に行われた慰安婦問題の討論会には「(元慰安婦の)名誉を回復し、補償を最大限引き出す。歴史を正し、責任ある大統領候補になる」とのメッセージを寄せた。問題を蒸し返す意図が読み取れる。

日韓両国は2015年の慰安婦合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。ユネスコへの登録などは合意に反する。合意を守らないなら、日韓関係は「戦後最悪のレベル」といわれた文在寅政権のときに戻ってしまう。日韓の政治・経済関係の基盤は破壊される。
李氏は過去に、日本を「敵性国家」と呼んだが、選挙戦では「重要なパートナー」と位置づけた。合意の順守がなければパートナーにはなりえない。政府間の決定を反古(ほご)にすれば韓国の信頼と国益は損なわれる。

李氏の安全保障認識にも不安がある。北朝鮮は韓国を敵国と明確に位置付けている。一方、李氏は就任演説で、「(北朝鮮との)対話と協力を通じて朝鮮半島の平和を構築する」と尹錫悦前政権が取った現実路線からの転換を表明した。
北朝鮮は、ウクライナを侵略するロシアへの援兵と引き換えに軍事技術の供与を受けている。台湾併吞(へいどん)を狙う中国は軍事的威圧を強めている。
李氏はかつて、「米軍は(朝鮮半島から)撤収すべきだ」「台湾海峡がどうなろうと、われわれには何の関係もない」と発言した。
台湾有事に韓国が無関係でいようとするなら米韓同盟は崩壊するだろう。韓国は対中抑止にも加わるべきだ。
朝鮮半島有事を含め韓国の安全は、在韓・在日米軍に加え、日本の安保協力なしに成り立たないことも李氏は忘れないでもらいたい。
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2025年6月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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