閣議決定した令和7年の経済財政運営指針「骨太の方針」は、日本経済を力強い成長軌道に導くための基本的な路線として「賃上げこそが成長戦略の要」という看板を掲げた。
Ishiba fiscal policy June 13

経済財政諮問会議で発言する石破茂首相(右)=6月13日午後、首相官邸(春名中撮影)

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物価高に伴う暮らしの悪化や、トランプ関税で高まる企業活動の不確実性を解消して日本経済を力強い成長軌道に導くことは、石破茂政権が最優先で果たすべき責務である。

6月13日に閣議決定した令和7年の経済財政運営指針「骨太の方針」は、そのための基本的な路線として「賃上げこそが成長戦略の要」という看板を掲げた。

野党や世論に広がる消費税などの減税論を牽制(けんせい)する狙いもあろう。「減税政策よりも賃上げ政策」とも表現した。

民需主導の自律的な経済を実現するには、中小企業にも広がりつつある賃上げ機運を一段と高め、物価高に負けない経済にする必要がある。賃上げを起点に消費を刺激し、企業収益や投資の拡大につなげる「成長型経済」を目指すということだ。

東京都内のスーパーマーケット

道筋は妥当でも、手取りの増加を確実に果たせるかどうかは別問題だ。5年間で物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を定着させるというが、国内外の経済環境が激変する中で企業は賃上げ機運を維持できるのか。

民間任せにすべきでないのはもちろんだ。骨太には企業の経営余力を高める価格転嫁・取引適正化や生産性向上のほか、医療や介護などの公定価格の引き上げといった賃上げを後押しする施策が盛り込まれたが、そこに新味があるわけではない。

国がなすべき施策の目標を具体的に設定し、確実な成果へとつなげなければ「成長型経済」も期待外れに終わるだろう。

骨太でもう一つ注目したいのが財政運営のあり方だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標は従来の「7年度」から「7~8年度を通じて、可能な限り早期」に後退させた。昨秋の経済対策で財政支出が増えたことが影響した。

無論、目標にこだわるあまり真に必要な支出をためらうべきではない。だが、社会保障の維持や防衛力強化などで財政需要は今後も膨らむ。大規模災害などの危機も見据えて財政余力を高めることは重要だ。目標実現の努力を怠ってはならない。

「金利のある世界」に戻った現在は従来のように国債を発行しやすい環境ではない。財政運営が市場に信認されず、金利が急上昇するリスクにも警戒がいる。参院選に向けて与野党の歳出圧力が高まる今、改めて銘記しておきたいことである。

2025年6月14日付産経新聞【主張】を転載しています

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