石破首相とトランプ米大統領が、G7サミットが開幕したカナダ西部カナナスキスで約30分間会談した。イスラエルとイランの激しい交戦という中東問題を両首脳が協議したという話がまるでなかったことは看過できない。
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トランプ米大統領(左)と会談する石破首相=6月16日、カナダ西部カナナスキス(内閣広報室提供・共同)

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石破茂首相と日本外交の劣化に落胆の思いを禁じ得ない。

石破首相とトランプ米大統領が、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開幕したカナダ西部カナナスキスで約30分間会談した。

関税交渉で合意できなかったのは残念だったが、予想された話だった。

それとは別に、看過できない点がある。イスラエルとイランの激しい交戦という中東問題を両首脳が協議したという話がまるでなかったことだ。

日本は原油の9割超を中東に依存し、日本向けタンカーの多くがペルシャ湾を航行している。戦火がオイルルートを阻害する重大事態が迫っているかもしれない。中東情勢への対応は日本にとって、関税交渉に匹敵する重大問題であるはずだ。

サミットで議論するだけでは足りない。同盟国の大統領とせっかく会談したのに中東について話し合わないでどうする。

G7サミットで討議に臨む各国首脳=カナダ西部カナナスキスで2025年6月16日、AP(G7カナナスキスサミットウェブサイトより)

もし首相が、議論していたことを披露していなかったのであれば、それもおかしい。日本が中東情勢に能動的に関わらない姿勢とみなされてしまう。

いずれにせよ首相には国を背負う覚悟が欠けていないか。

一方、合意できなかった関税交渉について首相は「国益に沿った形での合意の可能性を探っている」と述べた。成果を焦るあまり、首相が重視する米側の自動車関税などで安易に譲歩し、国益を損ねることが許されないのはもちろんである。

だが、赤沢亮正経済再生担当相は既に計6回の閣僚会合を重ねている。それでも一致していない交渉を打開できるのは両首脳しかいないのに、会談後も合意時期の目標すら明示しないというのはどうしたことか。

対中協議に重きを置くトランプ政権が、当初は最優先だった対日交渉の合意機運を低下させる恐れもある。そのせいで日米協議が長引き、トランプ関税による日本経済への悪影響が広がることは避けたい。

米政権の高関税政策には揺らぎがある。トランプ氏が自動車関税のさらなる引き上げに言及する一方、ベセント財務長官は相互関税の上乗せ部分の停止期間を延長する可能性を示す。

石破政権に求めたいのは、米側に翻弄されず戦略的かつ主体的に国益を追求する姿勢だ。合意の行方はトランプ氏次第などと受け身になる必要はない。

2025年6月18日付産経新聞【主張】を転載しています

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