
駆け込み乗車をやめるよう呼びかけるポスター(メトロ文化財団提供)
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関東の鉄道マナーポスターをご紹介しよう。取り上げるのは「東京地下鉄」(東京メトロ)だ。同社のマナー啓発は昭和49年9月からスタートし、今年で51年という歴史を誇っている。毎年スローガンを決め、毎月テーマに合わせてデザインを変えている。筆者のお薦めは平成20年度の『○○でやろう』シリーズと28年度の『漢字』シリーズ。このセンスのよさはどう? とくとご覧あれ!
関東に数ある鉄道の中でなぜ「東京メトロ」なの? 東京メトロはその昔「帝都高速度交通営団」(営団地下鉄)と呼ばれ、平成16年の民営化で発足した。千代田線、丸ノ内線、東西線、半蔵門線…と4線が通過する「大手町駅」に産経新聞の東京本社がある。なじみの鉄道なのだ。
その東京メトロのマナーポスターの中で大きな反響を呼んだのが、筆者がお薦めする2つのシリーズだ。
【○○でやろう】シリーズ(平成20年4月~)。
「そんなこと、他の場所でやればいいのに…」と誰もが思うような状況をイラストにして、あなたも知らず知らずのうちにこんなことやっていませんか?と呼びかけている。
筆者のお気に入りは『海でやろう』。駆け込み乗車でドアに挟まれ、泳いでいるかのようにみえる男性のイラスト。思わず噴き出してしまう。

このシリーズは大人気となり、同社広報部の石井正樹さんによると「出版社や学校の授業で使わせていただけませんか―という問い合わせが、特に多いシリーズになりました」という。
そのためか、このシリーズは数年続いており、女性が車内でお化粧をしている『家でやろう』は21年11月の作品。悪いマナーの例だけでなく、いいマナーは『またやろう』で統一され、座席を譲っている『またやろう』は22年4月の作品だ。

【漢字】シリーズ(28年4月~)。
「あなたのマナー、いいカンジ!?」と題して、漢字一文字でマナーを伝えるシリーズ。遠くからでも一文字の威力で瞬間的にマナー向上のメッセージが伝わり、外国人の興味も喚起できるように―と考えられている。

初回の同年4月は「扉」で5月は「音」、6月は「滴」。どの漢字もうまくマナーイラストにマッチしている。思わず「いいねぇ!」と声が出たほど。7月は「列」、8月「荷」、9月「見」、10月「声」、11月「滞」、12月「走」、29年1月「優」、2月「座」、3月「運」と続いている。

こうしたマナーポスターは、東京メトログループの関連財団「公益財団法人メトロ文化財団」が中心になって作っている。制作者はこんな人たち
こんなに素晴らしい「東京メトロ」のマナーポスターを誰が描いているのだろう。イラストレーター、グラフィックデザイナーが誰なのか、気になるところだ。
- 『○○でやろう』シリーズを手掛けたのは、平成17年に東京ADC(アートディレクターズクラブ)賞、20年に「暮らしの雑記帖」などで第39回講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した寄藤文平氏。
- 『漢字』シリーズは《かえる先生》のニックネームで呼ばれる長場雄氏。
- 『ありがとうグッドマナー』シリーズ(令和5年度)は、表情豊かで親しみやすいイラストが得意なおおさわゆう氏。
- 『みんなでみんなにいいマナー』シリーズ(6年度)は、3年公開の映画「花束みたいな恋をした」で劇中イラストを手掛けた関西出身の朝野ペコ氏。
- 『いつでもだれでもいいマナー』シリーズ(7年度)は、プロモーションコミックや雑誌の漫画連載などで幅広く活躍している小幡彩貴氏だ。つくばエクスプレスも
つくばエクスプレスも
関東の鉄道会社のマナーポスターといえば「JR西日本」編で登場した「つくばエクスプレス」(茨城・つくば-東京・秋葉原)。平成30年から始まった「やさしいやさい」「めいわくだもの」シリーズを経て、令和2年から昆虫が描かれた「困虫図鑑」「よい子ん虫図鑑」を展開中。いろんなアイデアが出てくるものだ。

その中で《コロナ禍に作成したポスターのため、一部キャラクターにマスクを着用させておりますが、現在、着用の呼びかけは行っておりません》という注釈がついたのが、よい子ん虫図鑑の『ススモンシロチョウ』。いろいろと気を使っておられますなぁ。
筆者:田所龍一(産経新聞)
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