
(左から)トヨタ自動車の佐藤恒治社長、日野自動車の小木曽聡社長、新統合持株会社CEO兼三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペンCEO、ダイムラートラックのカリン・ラドストロムCEO
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トヨタ自動車グループの商用車メーカーである日野自動車と、独ダイムラートラックグループの三菱ふそうトラック・バスが経営統合することで最終合意した。
それぞれの親会社が25%ずつを出資して持ち株会社を設立し、両社が傘下に入る。令和8年4月の統合完了を目指す。
自動車メーカーは脱炭素化や自動運転などの次世代技術の開発を迫られている。開発には多額の資金が必要だが、生産台数が少ない商用車メーカーが単独で対応するのは難しい。
統合によって開発を効率化するとともに、親会社も含めた4社の技術を結集する。日本だけでなく、世界市場で勝てる競争力を磨いてほしい。

中でも期待されるのが、クリーンエネルギーである水素の活用技術だ。乗用車では脱炭素技術の中核は電気自動車(EV)とされるが、長距離走行が求められる大型商用車をEV化するには大容量のバッテリーを搭載する必要があり、重量が重くなったり、荷台が狭くなったりする課題も指摘されている。
水素を使う燃料電池車(FCV)技術はトヨタが世界をリードしており、ダイムラートラックもFCVトラックの開発を進めている。トヨタは脱炭素技術として水素エンジン車の開発にも取り組んでいる。
大型商用車は決まった物流拠点を結ぶルートを走行することが多く、水素活用の課題とされる水素充塡(じゅうてん)設備を整備しやすいという利点もある。
一方、運転手不足もあって、商用車では乗用車以上に自動運転技術の導入が進む可能性がある。自動運転技術は世界で開発が進められているが、親会社の技術も活用しながら実用化を急ぎたい。
日野と三菱ふそうの経営統合は5年5月に基本合意していた。だが、日野で発覚したエンジン認証不正問題の対応で、6年3月としていた最終契約を延期していた。
約2年を浪費している間に、商用車では中国メーカーの台頭が一段と進み、商用車に対する環境規制も海外で強化された。次世代技術の開発で後れを取れば、両社が強みを持つアジア市場で存在感を失いかねない。両社には商品力強化という形で、早期に経営統合効果を出すことが求められる。
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2025年6月20日付産経新聞【主張】を転載しています
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