
スーパーコンピューター「富岳」=神戸市の理化学研究所計算科学研究センター(渡辺恭晃撮影)
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神戸市の理化学研究所(理研)計算科学研究センターで6月24日、新たに設置したIBMの量子コンピューターが本格稼働し、スーパーコンピューター「富岳」と連携させる運用が始まった。量子―スパコン連携で計算・処理能力が高度化し、新薬や新素材開発など幅広く活用が期待される。
量子コンピューターは、光や電子といった量子と呼ばれる極小の粒子の性質を利用した次世代の計算機で、「スパコンで100年かかる計算が1分でできる」性能といわれる。物質の性質や化学反応の仕組みを分子レベルで解析するために有効な「量子化学計算」がさまざまな分野で求められる中、開発競争が激化している。
一度に処理できる情報量が飛躍的に増えるが、外部のノイズなどの影響で計算エラーが生じやすいのが弱点。今回は富岳が計算結果を補正する「ハイブリッド型」で克服を図る。
五神真理事長は24日の記者会見で、富岳との組み合わせで「地球規模の課題解決に貢献できる」と語った。

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スパコン世界ランクで富岳7位
スーパーコンピューターの計算速度を競う世界ランキング「TOP500」が6月10日発表され、富岳は7位となった。前回は6位だった。首位から3位までは、前回と変わらず米国勢が独占した。
ランクはスパコン関連の国際会議の開催にあわせて約半年ごとに発表される。TOP500は高速計算を長時間安定して実行できる総合的な性能を示す。1位は前回と同じ米ローレンス・リバモア国立研究所の「エル・キャピタン」。ドイツの新しいスパコンが4位に入ったことで、富岳は順位を1つ落とした。
その他の日本勢では、産業技術総合研究所の「ABCI3.0」(千葉県柏市)が15位に、「ABCI-Q」(茨城県つくば市)が27位に新たにランクインした。
一方、ビッグデータの解析性能などを示す「Graph500」では、富岳が11期連続のトップを維持。産業利用で重視されるシミュレーションなどの処理性能を測る「HPCG」は前回まで10期連続の首位だったが、2位に後退した。
(産経新聞)
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