
北斎の名画が印刷されたアート段ボール。組み方を変えると自立して段ボールを収納できる(山本貞雄商店提供)
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堺市の企業が、名画を鮮やかにプリントした「アート段ボール」を開発し、大阪・関西万博に「バーチャル」出展が決まり公開された。手がけたのは同市北区で梱包(こんぽう)資材を扱う「山本貞雄商店」。独自開発の廃棄しやすい段ボールに絵画をつけ、楽しめるようにした。3代目の山本一博社長(44)を含め社員3人の中小企業だが「レガシーにしたい」と意気込んでいる。
同社は山本さんの祖父・貞雄さんが昭和21年に創業、現在は通販会社などに段ボールや緩衝材などを販売している。
7年前、社長に就任した山本さんは、崩した際に散らかりがちな段ボールをひもなどでしばらなくても、まとめる方法がないかと研究。たたむときに組み方を変えると床に立つ仕組みを考案、立った段ボールに他の廃棄段ボールを収納できるようにした。

まとめた段ボールは片手で持ち運べる。「スマポイ」と名付けて特許取得や商標登録も行い、令和4年度の「堺市ベンチャー調達認定制度」にも認定された。
今回の万博に出品したいと考えていたところ、1867年のパリ万博に出品されてゴッホらに大きな影響を与えた葛飾北斎の絵を入れることを考え付いた。「世界へのメッセージになる」と名画「神奈川沖浪裏」などをスマポイに印刷。ネット上で中小企業の優れた技術を紹介する大阪ヘルスケアパビリオンの「バーチャル」パビリオンに採用された。
ただ、スマポイはまだ一般販売はされていない。多くの自治体は段ボールの廃棄方法として「ひもでくくる」ことを求めており、くくらなくてもいいスマポイは廃棄しにくいためだ。

プラスチック製のひもが普及するなか、ひも不要のスマポイならプラスチック廃棄物の削減につながるとPRする。
また「アート段ボール」を堺市のふるさと納税に登録することも目指している。山本さんは「将来、あの万博で初めて出たといわれるようなレガシーにしたい」と話している。
筆者:中野謙二(産経新聞)
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