結婚式場としても人気の大阪市北区・旧桜宮公会堂の正面玄関は、急速に西洋化が進んだ明治初期の建築を象徴する。レトロで華やかなレストランでは、明治時代のメニューを再現した料理を味わうことができる。
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旧桜宮公会堂のレストラン。当時の雰囲気をよみがえらせた見事な仕上がりとなっている=大阪市北区(いずれも柿平博文撮影)

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急速に西洋化が進んだ明治時代。建築にもその波が押し寄せた。結婚式場としても人気の旧桜宮公会堂(大阪市北区)の正面玄関も、そんな明治初期を象徴するものの一つ。レトロで華やかなレストランでは、6月末まで明治時代のメニューを再現した料理を味わうことができる。

5月上旬、大阪メトロ谷町線の南森町駅を降りて歩いていくと、緑の中にたたずむ洋風の建物が見えてきた。竜山石でできた6本の柱が印象的な正面玄関(重要文化財)に、大きな扉。向かい側には、同じく重要文化財の「泉布観(せんぷかん)」が建っており、明治時代に迷い込んだよう。公会堂の中に入れば、豪華なシャンデリアがあるレストランが目の前に広がった。

階段の手すりは建設当時のままだというd.

旧桜宮公会堂は昭和10年、明治天皇記念館として建設。その際、明治初期に建設された造幣寮(現造幣局)の鋳造所正面玄関を移築した。鋳造所取り壊しの際に保存されていたもので、大扉や照明も含めて創設時のまま現在まで残されており、国の重要文化財に指定されている。

ヘレン・ケラーが舞台で講演したという明治天皇記念館。平成19年に閉鎖後、長らく使用されていなかったが、所有する大阪市が管理運営事業者を募集、今も同公会堂を管理運営している「ノバレーゼ」がリノベーションを行い、25年に婚礼施設兼レストランとして開業した。

旧桜宮公会堂。6本の柱が印象的な正面玄関は重要文化財に指定されている

古い設計図の他に当時の用途や内装デザインを知る資料がなく難航したが、イメージを膨らませながら復元、天井の装飾など残せる部分は残し、当時の雰囲気をよみがえらせた見事な仕上がりになっている。

「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれたのは、ノバレーゼ営業本部大阪・芦屋地区ゼネラルマネージャーの尾崎哲也さん。用意してもらったコース料理は文献などを参考に明治時代のメニューを再現した「明治の饗宴(きょうえん)」だ。4月から6月末まで提供されており、この日は計7品が提供されるコースをいただいた。

明治時代のメニューを再現したコース

前菜は「蒸鮭凍凝物(むしさけよせもの)」(サーモンのショーフロワ)。低温調理したサーモンをマヨネーズなどのソースでコーティングし、コンソメのジュレの上に置いた一皿で、見た目はレトロでかわいらしい。食べるとサーモンの風味とマヨネーズの酸味が口いっぱいに広がり、コンソメと絡み合って絶妙なバランスの味わいになる。

魚料理は「鯛詰赤茄子(たいづめあかなす)」で、煮込んだタイやジャガイモなどをトマトの中に詰めて焼いたもの。優しいトマトの甘さと酸味がほかの具材を包み込み、この一品だけでも満足感を得られそう。他にも明治時代にはデザートの前に締めとして野菜が提供されたといい、今回のメニューではアスパラガスが提供されるなど、当時の文化を体験できる。

「明治天皇とゆかりのある場所で明治時代の料理を楽しめるのはここだけ」と胸を張る尾崎さん。タイムスリップしたような気分にひたりつつ、豪華な料理を味わう幸せをかみしめた。

筆者:前原彩希(産経新聞)

■旧桜宮公会堂

  • 営業時間:平日午前11時半~午後3時半(ラストオーダーは午後2時半)
    「明治の饗宴」全5品コース4800円(税込み)、全7品コース6300円(同)など
  • 定休日:第2水曜日、婚礼予約のある土日祝日
  • 問い合わせ:電話050-5306-8500
  • 住所:大阪市北区天満橋1の1の1
  • アクセス:JR大阪環状線桜ノ宮駅から徒歩約9分など

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