
学んだ海洋ごみ問題について発表する奈良県生駒市立光明中学の2年生たち=6月21日、万博会場の「ブルーオーシャン・ドーム」(大阪市此花区、山口暢彦撮影)
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海洋ごみ問題解決に向け、〝海なし県〟奈良県の生駒市と、中国や韓国からのごみの漂着に苦しむ長崎県対馬市の中学2年生が大阪・関西万博でタッグ-。オンラインで交流してきた両市の中学生がこのほど、夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の万博会場に集まり、問題解決のアイデアなどを披露した。ペットボトルでプリントシール機の料金を払えるようにするといった中学生らしい斬新な内容。未来を担う子供たちが、万博を飛躍台に「未来社会のデザイン」へ取り組みを加速する。
海洋ごみは世界的な課題で、とくにプラスチックは生態系や人体への悪影響が懸念される。ただ、昨年12月、韓国・釜山で開かれた政府間交渉委員会の会合では、プラごみ削減を目指す国際条約作りの合意が先送りされ、各国間の溝の深さが浮き彫りになった。

日本の場合、対馬市の海岸には年間約3万立方メートルのごみが漂着。ペットボトルや発泡スチロールなどのプラごみが多く、ペットボトルは韓国や中国の製品が多数を占める。
昨年10月、生駒市立光明中と対馬市立西部中の1年生が、環境省の事業の一環としてオンラインによる交流学習をスタート。海洋ゴミ問題に取り組んでいる工具箱メーカー「リングスター」(生駒市)の活動に触発された。同社は、対馬のプラごみを配合した買い物カゴをつくり、万博会場内のオフィシャルストアへ提供するなどしている。
交流学習のテーマは、海のない生駒市の小中学生が海洋ごみに興味を持てる企画を考えること。光明中生は、西部中生が撮影した動画で対馬市の海岸のごみ拾いを疑似体験するなどし、現状を学んだ。
そして、複数回の選考を経て選ばれた光明中の2チーム10人(現在2年生)が今月21日、万博会場のパビリオン「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)」でアイデアを発表した。
アイデアは、子供に人気のあるプリントシール機の料金をペットボトルで払える「ゴミプリ」。ペットボトルはリサイクルされる。生徒は「私たちにも地球にもメリットがある」と話した。
海洋ごみの知識や情報を得られるゲームを組み合わせられないかも考えているとし、「ペットボトル商品を扱っている企業やリサイクルしている企業と、協力していきたい」と提案した。

日常的に海洋ごみ問題に直面している西部中生も、寸劇を交え、対馬が地理的に「ごみの防波堤」となっている現状を訴えた。そして「分別しないごみを捨てない」「減プラスチックを貫く」など4つの誓いを宣言。トークセッションでは、両校の生徒がこれからも力を合わせることを約束した。
協力してきたリングスターの唐金祐太取締役は「中学生たちは想像以上の答えを返してくれた」とコメント。進行役を務めた生駒市の教育アドバイザー、尾崎えり子さんも「年齢、地域、学校、民間、行政の枠を超え対話できた」と意義を強調した。
唐金さんらは生徒のアイデアの実現を行政や企業に働きかける。リングスター自身、デザイン面で光明中生の協力を受け、対馬のプラごみを配合した小物ケースなどを開発して、8月末にも打ち出す考えだ。
筆者:山口暢彦(産経新聞)
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