 
                サハリン(樺太)南端のプリゴロドノエで稼働した石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)プラント=2009年2月
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トランプ米政権が、ウクライナ侵略を続けるロシアへの圧力を強めている。
戦費につながるエネルギー収入を削(そ)ごうとロシアの石油大手2社を経済制裁の対象に加えた。同盟国にも同調を呼び掛けている。
先進7カ国(G7)がロシアへの制裁を強化する中でも、日本は液化天然ガス(LNG)の1割弱をロシアから調達してきた。だが、ベセント米財務長官は日本に対し、ロシア産エネルギーの輸入停止を「期待している」と伝えており、例外視しない可能性がある。
LNG調達に支障が生じることがないよう、官民で備えを進めておく必要がある。
日本が輸入するロシア産LNGは、三井物産と三菱商事が参画する極東のサハリン(樺太)での石油・天然ガス開発事業「サハリン2」からのものだ。米国はロシアへの金融制裁からサハリン2関連の取引を除外しているが、この特例措置は12月19日未明に期限を迎える。

サハリン2からは日本まで3日程度で輸送でき、調達を停止すればコスト上昇は避けられない。LNGは世界的に需要が拡大しており、長期にわたり低コストで安定的に調達できる代替先を見つけることは容易ではないが、官民挙げて努力を尽くすべきだ。
中長期では米国が有力な代替先候補となる。有利な条件で米国産LNGを調達できるよう、交渉を進めることも重要だ。
サハリン2からの調達契約は2029(令和11)年以降、段階的に更新時期を迎える。日本が更新しなければ、LNGの調達拡大を進める中国を利するとの見方も強いが、ロシアにLNGを依存することはエネルギー安全保障上も問題がある。
ウクライナ和平の行方は見通せないが、状況に応じてどう対応すべきか、契約更新についても官民で十分に検討しておくことを求めたい。
ロシア産LNGについては、欧州連合(EU)が26年末までに輸入を停止することで合意した。G7の一員として、日本もロシアに対する圧力強化を進めるべきは当然である。
ただし、資源に乏しい日本にとってLNGは暮らしや産業に欠くことができない。影響を軽減するには、原発再稼働の推進など持てる手段を最大限に活用することが求められる。
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2025年10月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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