日経平均株価を示すボード。終値として史上最高値となる5万2400円台を記録した=10月31日午後、東京都中央区(酒井真大撮影)
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高市早苗政権が発足し、東京株式市場が活況を呈している。
10月27日に日経平均株価が初めて5万円台に乗せた後も騰勢が続き、31日の終値は5万2411円34銭まで急伸した。10月の上げ幅は過去最大の7400円超である。
強い経済の実現に向けて「責任ある積極財政」を掲げる高市首相の経済成長路線に海外投資家らが目を向け、長らく割安感のあった東京市場の株式相場を一段と押し上げた。「高市トレード」と評されるゆえんだ。
期待先行ではあろう。それでも株式市場が活性化すれば経済を勢いづかせる。この流れを実体経済の力強い回復につなげられるかが重要だ。今後の高市首相の政策手腕が問われよう。

最近の株高は、米中間の貿易摩擦激化への懸念が後退したことや、人工知能(AI)といった成長分野への投資などが牽引(けんいん)している面もある。そこに高市政権への期待感が加わり、東京市場は海外市場と比べても際立った急騰をみせている。
無論、相場の過熱に対する警戒は怠れない。トランプ関税の影響が本格化し、日本企業の輸出が想定以上に打撃を受ける可能性はある。米中首脳会談後も摩擦再燃の火種は残る。米中経済の停滞で世界経済を下押しするリスクはあろう。日本経済は楽観できる状況ではない。

高市政権に求めたいのは、経済を持続的な成長軌道に乗せることだ。食料価格などの高騰に賃上げが追い付かない現状の打開へ物価高対策に傾注すべきはもちろん、成長分野への投資を促す環境整備も徹底したい。予算をばらまくのではなく、効果を見極め、財源を吟味して中長期的成長につなげるべきだ。
もう一つ注視したいのが金融政策を巡る日銀と高市首相の距離感だ。追加利上げを模索する日銀と異なり、高市首相は利上げに慎重とみられている。だが利上げが遠のけば、円安傾向を助長し、輸入物価を押し上げて物価高を加速させる可能性があることには留意が必要だ。
日銀は先の金融政策決定会合で追加利上げを見送った。トランプ関税に伴う海外経済の不確実性や物価動向を踏まえた判断だ。政治情勢ではなく経済の実態を冷静に見極めて物価の安定を図るのが日銀の責務だ。今後の金融政策運営においても銘記しておくべきことである。
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2025年11月2日付産経新聞【主張】を転載しています
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