Total Views:82  (last 5 days) 
---- Daily Views ----
array(3) {
  ["2025-11-10"]=>
  int(42)
  ["2025-11-11"]=>
  int(36)
  ["2025-11-12"]=>
  int(4)
}
北朝鮮による拉致被害者救出を求める「救う会」会長の西岡力氏は、「日朝首脳会談の可能性は十分高い。ただ、その行方はトランプ米大統領の動向次第」と指摘する。
Untitled design

「救う会」会長の西岡力氏

This post is also available in: English

朝鮮半島情勢の専門家として知られる、北朝鮮による拉致被害者救出を求める「救う会」会長の西岡力氏はJAPAN Forwardのインタビューで、高市早苗首相が北朝鮮の核問題をいったん脇に置き、平壌との直接対話に乗り出す意向を示唆していると語った。

高市首相は10月の就任以来、拉致問題の解決に向け、あらゆる外交ルートを駆使する決意を示している。

2002年、日本政府が公式に認定した日本人拉致被害者17人のうち、5人が帰還した。しかし、残る12人と、そしておそらく数百人にのぼる拉致被害者はいまだ行方不明のままである。

進展への期待が慎重に高まる中、西岡氏は自身の見解を明らかにした。

拉致問題にどのような展開が予想されるか?

11月3日の全国集会で、高市首相は日本が北朝鮮に首脳会談を提案するため接触したことを明らかにした。注目されるのは、北朝鮮の核開発に関して言及しなかった点であり、この省略には重大な意味がある。

従来、安倍元首相をはじめ歴代の日本指導者は、北朝鮮との国交正常化には拉致問題だけでなく、核・ミサイル計画に関する包括的な進展が前提条件だとの立場を堅持してきた。

高市氏は、こうした前提条件なしに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と直接対話する意思を示しているようで、拉致問題の解決に向けてあらゆる努力を惜しまないと誓っている。

東京・迎賓館で北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの母・横田早紀江さんと面会するトランプ米大統領=10月28日(内閣府)

日朝首脳会談の可能性は?

北朝鮮は、限定的な大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験は続けつつも、本格的な核実験は控えてきた。金正恩氏は、米政府による制裁強化にもかかわらず、トランプ米大統領との約束を守ってきた。おそらく、トランプ氏の再選を見込んでいたのであろう。

もしトランプ大統領と金正恩氏の会談で具体的な成果が得られれば、日朝首脳会談も十分に実現可能で、すぐに開催されると思われる。両者の関係は切り離せない。米政府は、たとえ合意に達しても米国側から北への経済支援は行わない方針を維持している。トランプ大統領は、日本がその役割を担うことを想定している。

韓国の情報機関、国家情報院の報告によれば、トランプ大統領と金正恩氏の首脳会談が2026年3月以降に開催される可能性が高い。この日程は、私の独自の情報源でも確認されている。

露朝関係の密接化により、北朝鮮を交渉の場に引き出す取り組みが複雑化したとの見方もあるが、これについてどう考えるか?

軍事支援の見返りとしてロシアから資金を受け取っているのは確かである。しかし、これらの資金は北朝鮮の軍事力維持のみに充てられ、一般市民の支援には使われていない。

エネルギー供給の逼迫も実感している。いままで北朝鮮のガソリン価格は低水準で推移していたが、10月にはほぼ倍増した。これは、主にウクライナによるロシアの石油施設への攻撃が原因とみられる。露朝の関係は、本質的には「トランザクションナル(取引的)」なものにすぎない。

ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記が9月3日、天安門広場前にそろって姿を見せた(ロイター)

中国との状況も同様である。北朝鮮の対中貿易は9月に前年同月比で約30%増加したものの、その増加分は主に加工品や工芸品によるもので、米や肥料などの必需品の輸入は実際には減少している。

9月3日に習近平中国国家主席と会談するため北京を訪れた際でさえ、実質的な支援はほとんど得られなかった。中国は北朝鮮を「殺さず、生かさず」の立場で対応している。

実際の交渉は、どのような形で進められると想定されるか?

過去、日本政府は北朝鮮が核兵器を放棄すれば、1965年に韓国に提供した経済援助に匹敵する巨額の資金を提供する可能性があると示唆してきた。これは、北側が切望する誘因であろう。

しかし、国連制裁が継続する現状では、日本は北朝鮮に開発援助を提供できない。したがって、金正恩氏の戦略はまずワシントンとの核合意を成立させ、それを盾に制裁緩和を迫ることにある。

北朝鮮内部の情報筋によると、金政権は追加の核兵器を製造せず、核開発を停止する意向を示している。既存のプルトニウム炉や再処理施設、実験場も解体される見込みだ。ここまでの内容は、2019年のハノイ首脳会談で既に協議されていたものである。

北朝鮮側が「訓練」として発表した、ICBM火星18号発射を視察する金正恩総書記=2023年12月(朝鮮中央通信=ロイター)

それに加え、今回は降仙(カンソン)を含む全てのウラン濃縮施設の解体や、北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの廃棄が盛り込まれる可能性がある。ただ、現在保有する核弾頭と核物質(プルトニウムおよび濃縮ウラン)の合計で、体制維持のために約100発分の弾頭相当を確保しておきたい意向とみられる。

北朝鮮が米本土を攻撃可能なICBMを放棄するとの確約を得ることは、トランプ氏にとって重大な戦略的勝利となる。

ベトナム・ハノイで開かれた第2回米朝首脳会談の延長協議中に意見を交わす北朝鮮の金正恩総書記とトランプ米大統領=2019年2月28日(ロイター)

金政権は、ICBMの廃棄に応じるか?

そもそも、なぜ北朝鮮はICBM開発を追求してきたのか。金日成がかつて説明したように、米本土に到達可能な核ミサイルを保有することは、朝鮮半島統一を達成するための手段と見なされていた。

1950年の朝鮮戦争で、北は奇襲攻撃に成功したものの、米軍の介入により最終的に半島全土の占領には失敗した。当時の北朝鮮政権は、長距離ミサイルを将来の同様の米軍介入を抑止する手段と位置付けていた。

しかし、金正恩氏が統一の目標を正式に放棄したため、奇襲攻撃の戦略自体が有効性を失った。

米国との核戦争で勝利できるとは金正恩氏も考えていない。短距離ミサイルは依然として韓国を標的とする上で不可欠だが、戦略的価値が低下したICBMの放棄はあり得る。

ウクライナ戦争は、北朝鮮の戦略にも影響を与えたのか?

2022年2月、ロシア軍がウクライナへの攻撃を開始した際、西側兵器の優れた性能が首都キエフの占領を阻んだ。

現在の韓国の通常戦力は北朝鮮をはるかに上回る。いまでは、北大西洋条約機構(NATO)は韓国の高性能兵器を積極的に調達している。たとえ米国が韓国を支援しなくとも、金政権は奇襲攻撃が成功する可能性が低いことを認識している。

聞き手:吉田賢司(JAPAN Forward記者)

This post is also available in: English

コメントを残す