新潟県の東京電力柏崎刈羽原発
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東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は国の原発政策に大きな追い風となる。人工知能(AI)向けデータセンターの増加で電力需要の拡大が見込まれる中、政府は安定的な脱炭素電源として原発を最大限活用する方針を掲げる。原発の安全性への不安が根強い東日本で理解が進めば、再稼働の加速が期待できる。次世代革新炉の導入にも弾みがつきそうだ。
「花角知事の判断に感謝を申し上げたい」
赤沢亮正経済産業相は11月21日の記者会見でこう述べ、新潟県の花角英世知事が再稼働容認を表明したことを歓迎した。
再稼働は東電だけでなく、国にも悲願だった。
東電福島第1原発事故後、国内の原発は全て停止。国は原発依存度を可能な限り低減する方針を掲げ、事業者が目指す再稼働は進まなかった。建設中を含む36基のうち、足元で再稼働を果たしたのは14基にとどまる。
だが、ここにきて潮目が変わった。人口減で減るとみられていた電力需要が、データセンターや半導体工場の増加で急拡大する見通しに転じた。国は大量の電力を安定供給できる脱炭素電源が成長に欠かせないと判断、原発を最大限活用する方針にかじを切った。
2月に閣議決定したエネルギー基本計画では、2040年度の電源構成で原発を2割程度と見込む。現在は1割弱で、40年度に2割程度に引き上げるには、36基ほぼすべての稼働が必要となる。
特に、東日本で再稼働を果たしたのは東北電力女川原発(宮城県)のみで、柏崎刈羽原発の再稼働実現に伴い機運の高まりが期待される。再稼働が加速すれば、電力供給の安定化に加え、西日本より高い電気料金が下がることにもなりそうだ。
安全性などを高めた次世代革新炉の導入促進も視野に入る。日米関税交渉で約束した5500億ドル(約86兆円)の対米投資に関し、米原発会社の小型モジュール炉(SMR)などの案件にIHIなどの日本企業が関心を示しており、開発が加速する可能性がある。
とはいえ、課題は山積する。使用済み燃料を再利用する核燃料サイクル政策の確立や、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の議論は道半ば。丁寧かつ迅速な対応が求められる。
筆者:中村智隆(産経新聞)
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