トキの恋ダンス(大山文兄撮影)
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師走も残り少なくなってきた。佐渡では一度、雪が積もったが今は溶けてしまっている。冬本番はこれからだ。この季節はトキにとって繁殖に向けての準備期間だ。
畦の上のダンスの実態
田んぼの畦で、2羽のトキが大声で鳴きながら、羽を全開に広げてグルグル回っていた。まるで、2羽が踊っているようだ。
ロマンチックに見えるが実は、この行動はダンスではなくケンカだという。肉眼で遠目で見ると、優雅なダンスに見えるが、望遠レンズを通すとケンカだとわかる。恋の季節に見られるため、分かりやすく私は「トキの恋ダンス」と呼ぶことにした。
トキモニタリングチームによると、ケンカはオス同士であることが多い。気に入らない相手が近づいてきたり、自分のペアであるメスにちょっかいをかけようとするオスを追い払うために威嚇しているという。
オスがメスを相手にケンカすることもある。このときは、パートナーが既にきまっているオスに、まだ相手がいない若いメスが近づき、追い払われているという。人間の世界なら若いメスのアプローチにオスは鼻の下をのばしそうだが、パートナーが決まったトキはなかなか誠実だ。
この恋ダンスは突然始まり、あっという間に終わってしまう。
恋の集団水浴び
ダンスと同様、恋のシーズンで見られるのが集団で行う水浴びだ。
水浴び自体は1年中行っているが、この時期は群れになっているため、1羽が水浴びを始めると、我も我もと群れ全部のトキが水浴びを始める。

田んぼの小さな水たまりの中での集団での水浴びの様子は圧巻だ。露天風呂を楽しんでいるようにも見える。

トキは 繁殖期になると、首の周りの黒い物質を身体中に塗りたくり、生殖羽と呼ばれる黒い羽に変化する。こんな行動は、世界中の鳥の中でもトキだけだ。水浴び後の羽繕いで黒く塗ることが多いが、撮影の時はまだ黒くなっておらず、ピンクの羽根の色が鮮やかだった。
繁殖期に向けてもうしばらく、美しいトキの色を楽しむことができる。

筆者:大山文兄(フォトジャーナリスト)
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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。
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