2026年が始まった。米国防総省が公表した年次報告書は「中国は2027年末までに台湾における戦争に勝利できると見込んでいる」と分析している。日本は深刻に受け止めるべきだ。
Chinese military missiles Taiwan encirclement

中国軍の東部戦区が2025年12月30日、台湾周辺での軍事演習の一場面として「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントに投稿した画像(共同)

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令和8(2026)年が始まった。

ロシアのウクライナ侵略を除いて、世界で最も懸念されるのは台湾有事だ。中国軍は昨年末から台湾を囲む形で軍事演習を始めた。

米国防総省が昨年12月に公表した中国の軍事力に関する年次報告書は「中国は2027年末までに台湾における戦争に勝利できると見込んでいる」と分析した。日本は深刻に受け止めるべきだろう。

「尖閣は台湾」と狙う中国

安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事、日米同盟の有事」という発言は正しい。日本と台湾の距離は極めて近い。尖閣諸島を中国は「台湾省」の付属島嶼(とうしょ)としている。その立場からすれば台湾統一は日本からの尖閣諸島奪取なしに完成しない。日本が台湾有事を傍観できない理由の一つだ。

戦後初めて武力攻撃される事態を招かないよう政府も国民も努力を重ねるべき年と心得たい。「台湾有事の前年」に日本は手をこまねいていたと後世、言われてはなるまい。まさか戦争はないだろうと油断し、ほぞをかんでも遅すぎる。厳しい時局観に切り替え、有事を抑止する努力を払わないと危うい世界に私たちは生きている。抑止力と対処力の向上へ必要な措置は、拙速でも構わずに実行しなければならない。

臨時国会が会期末を迎え記者会見を行う高市早苗首相=2025年12月17日午後、首相官邸(春名中撮影)

たとえば与党は今年、インテリジェンス機能の強化を進める構えだ。「じっくり時間をかけて」と唱える向きもあるが、それでは危機感が乏しすぎる。

4年前の話だ。米英両政府から、ロシアのウクライナ侵攻が間近だとの情報が流れた。

ロシア軍の展開を、日本を含む主要国の政府や軍も衛星情報などで追っていた。だが、米英を除く国々は本格侵攻に懐疑的だったという。軍事常識からみて動員規模がウクライナ制圧に足りなかったからだ。ウクライナ政府でさえ侵攻直前まで、物騒な話をするなと文句を言っていた。

だが、独裁者であるプーチン露大統領は侵攻を選んだ。ウクライナの国土は蹂躙(じゅうりん)され、ウクライナ国民は今もミサイルやドローン(無人機)で攻撃されている。

2つの教訓がある。

まず、相当な軍や情報機関を持つ独裁国家のトップであっても、相手を軽んじるか自国を過大評価して「勝てる」と誤断し、侵略を実行することがあるという点だ。

もう1つは、イラク戦争で大量破壊兵器の存在を巡り誤断したことはあるにせよ、米国の情報力、情勢判断力には一目置くべきだ、という点だ。昨年末の米国防総省の年次報告書はさまざまな情報力を駆使した成果である。

外交努力は当然だが、中国の独裁者に侵略可能だと判断させないよう抑止することが不可欠だ。

安保の現実見据える国民

世論は昨年、安全保障を巡って大きく変貌し、積極的平和主義を後押しするようになった。高市早苗首相の台湾有事を巡る当然の発言に中国や、立憲民主党、日本共産党、一部メディアなどの国内左派勢力が猛反発した。だが高い内閣支持率は微動だにしなかった。

富士山=20251月24日、静岡県富士市(酒井真大撮影)

一部メディアが官邸筋の核抑止力に関する発言をオフレコ破りで批判的に取り上げても国民はほとんど同調しなかった。国民の大勢が、左派の空想的平和主義、専制国家中国を喜ばせる危うい言説に影響されなくなったのは極めて喜ばしい。この画期的現象に中国や、日本の左派政党・メディアは当惑しきりだろう。

今月下旬に日本からパンダがいなくなるのは象徴的である。ソ連の脅威下ならいざ知らず、その後の惰性の日中友好は終わるということだ。あらゆる分野で対中関係の仕組みの大幅な見直しが求められる。脅威を見据え、平和と安全を守る方策を講じる年にしたい。

筆者:榊原智(産経新聞論説委員長)

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