今年、東京電力福島第1原子力発電所の事故から15年を迎える。原子力発電への忌避感情はいまだ根強い。産業と暮らしを守るには、偏見を排した冷静な評価の醸成が必要だ。
Tohoku Electric Onagawa Nuclear plant

新規制基準に基づき、防潮堤の設置など安全対策を強化した東北電力の女川原子力発電所

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巨大津波による東京電力福島第1原子力発電所の事故から今年3月で15年を迎える。

当時、54基あった日本の原発は東日本大震災を境に33基に減り、再稼働は14基のみだ。原子力発電への忌避感情はいまだ根強い。その一方で社会情勢は大きく変わった。エネルギー安全保障に直結する国際緊張の高まりに加え、人工知能(AI)の躍進などが起きている。

エネルギー資源の大半を海外に依存する日本が、将来にわたって産業と暮らしを守るには、安定供給と脱炭素を同時に満たす電源構成が欠かせない。それには準国産エネルギーである原子力発電への偏見を排した冷静な評価の醸成が必要だ。

新潟県の東京電力柏崎刈羽原発(共同通信社機から)

柏崎刈羽6号も稼働へ

世界の状況変化に対応する形で原発をめぐる新たな動きが生まれつつある。例えば1月20日に予定される東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働だ。地元には反対の声もあったが、再稼働是認の意見が上回った。6号機の電力は首都機能維持に貢献するため、復活の意義は大きい。

これに先立ち、令和6年10月に東北電力女川原子力発電所2号機が、同年12月には中国電力島根原子力発電所2号機が再稼働している。これら3基は関西電力などの加圧水型に比べ、再稼働が遅れていた沸騰水型の原発であることに注目したい。ようやくの復活である。

昨年7月、原子力規制委員会の安全審査に合格した北海道電力泊原子力発電所3号機も来年の再稼働を目指し準備が進む。原子力が再び基幹電源として立ち直る道筋が見えてきた。

北海道泊村の北海道電力泊原発

ただし、制度上の課題も顕在化している。テロ対策の特定重大事故等対処施設(特重施設)の問題だ。

東北電力の女川2号機は、工事中の特重施設の完成が間に合わないため、設置期限の今年12月下旬に運転を止めなければならない。遅れの背景には働き方改革による建設業界の工期の長期化がある。にもかかわらず、5年間という一律の工事期限が据え置かれた結果である。

安全対策工事と特重施設の工事は同時進行となるので、電力会社の負担は極めて大きい。

柏崎刈羽7号機も特重施設の遅れで再稼働を延期している。規制委は社会情勢の変化に気付かなかったのか。規制委の使命は原発を「止める」ことではなく「安全に動かす」ことにあるはずだ。こうした中で、中部電力浜岡原子力発電所の審査で規制委に説明した同社の地震評価に不正があったのは残念だ。

AIに象徴される高度デジタル社会の発展には安定した大規模電源が不可欠で、その要請にかなうのは原子力発電だ。

世界は原子力の利用拡大に向かっている。国内でも新増設や建て替えの芽が出始めた。積極的かつ健全な対応である。

地層処分と再処理急げ

関西電力は美浜原子力発電所で次世代型革新炉建設の可能性検討の現地調査を開始した。原発建設はプラントメーカーの技術継承、部材のサプライチェーン維持にも直結する。原子力の活用には、造る力・動かす力を国内に残さねばならない。

併せてバックエンドの確立にも展望を開きたい。高レベル放射性廃棄物の地層処分では、北海道の2町村で行われた文献調査から次の概要調査への移行の可否が焦点になっている。

関西電力美浜発電所。手前から1号機2号機3号機=福井県美浜町(産経新聞本社ヘリから)

概要調査に進めば全国的な関心が高まり、文献調査を検討する市町村の増加につながるはずだ。北海道知事には概要調査受け入れの英断を期待する。

令和8年度中を目標とする日本原燃・再処理工場(青森県六ケ所村)の完成も急がれる。

原子力発電を持続可能にする核燃料サイクルの確立には、再処理工場と地層処分の実現が欠かせない。

工事が一時中止となった、メガソーラー開発工事の現場=2025年11月、千葉県鴨川市

再生可能エネルギーは福島事故後、優遇政策で乱立的に増えた。だが、電力需要の急増が予見される当節、その限界に直面している。大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に対しては自然環境の破壊で地域の懸念が強まり、政府は昨年12月下旬に不適切な事例の抑止などを図る対策パッケージをまとめた。洋上風力発電もコスト高騰などの逆風にあえいでいる。

福島事故の教訓は重い。だからこそ、感情ではなく合理的な制度と科学技術力で安全性を高め、政府は責任あるエネルギー構成を築くべきである。今年を原子力を軸に電源の厚みを取り戻す起点の年にしたい。

2026年1月7日付産経新聞【主張】を転載しています

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