新潟県佐渡島の生物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第30回目は、冬の日本海をナイトダイブして見つけた生きた宝石(?)を紹介します。
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キラキラ輝く卵を守るアイナメのオス(大山文兄撮影)

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「大山さん、ナイトダイビング行きませんか?」―。昨年12月下旬、馴染みのダイビングショップの誘いで真冬の日本海に潜った。真っ暗な海に潜りライトをあてると、浮かびあがって来たのは宝石のようにキラキラ光るアイナメの卵の数々だ。

グリーンに輝くアイナメの卵。卵膜を通し目玉が見える(大山文兄撮影)

金色のオスの登場

冬の日本海というと、荒波が岩場に打ちつける、そんな海を思い浮かべるだろう。実際、強風にあおられた大波が岩に打ち付ける光景は、迫力と同時に畏怖を感じる。全国有数の強風地帯でもあるが、島内には大佐渡、小佐渡と呼ばれる山々が連なり、その山影となる場所では、ダイビングを楽しむことができる希少な地域でもある。

オレンジに輝くアイナメの卵(大山文兄撮影)

今回、潜ったのは小木(おぎ)エリアにある琴浦洞窟(竜王洞)と呼ばれるポイントだ。この日の気温は12月下旬としては暖かい6度。ところが、海の水温は15度と温かい。

潜って約5分。水深15mの岩場では、全身が金色のアイナメのオスが、ダイバーを警戒しながら海藻の周りをゆっくりと泳いでいる。その魚体の下にはピンク、オレンジ、そしてグリーンの卵の粒の塊が6つあるのを確認できた。

卵1粒の大きさはおよそ2mm。アイナメは一度に数千~数万の卵を岩場や海藻などに産みつける。

マクロレンズがとらえたバラ色に輝く卵(大山文兄撮影)

イクメンのアイナメ

アイナメは北海道から九州まで水深の浅い藻場や岩場にすみついている。白身の高級魚として釣りの対象魚として人気だ。秋から冬にかけてが産卵期で、身体の色は通常、茶褐色だが、オスはこの時期、黄金の婚姻色に変化する。そして、メスが産んだ卵を孵化するまで外敵から守り続けているという。一方、メスは卵を産んだ後はすぐに岩場を離れ、産卵で疲れた体力を回復させるために、餌を食べまくるのだという。

イクメンのアイナメのオス(大山文兄撮影)

案内してくれたダイビングインストラクターの小出博之さんによると、「メスごとに卵の色も違う」という。卵は約1カ月で孵化するが、その間に別のメスも卵を順々に産みつけるため、オスは2カ月以上、卵が孵化するのを見守る「イクメン」なのだ。

軽トラック1台分の機材

今回のナイトダイビングはライトだけを頼りに潜るスリルと、昼間には出会えない魚たちを観察するためだが、もう一つが購入したばかりの撮影機材を試すという目的があった。

これまでの海中写真はGoProの動画から静止画を切り出してきた。しかし、画質や表現力的には満足できず、思い切って新機材導入に踏み切った。トキ撮影に普段、使用しているミラーレスカメラを水中でも使うためには、ハウジングと呼ばれる防水の対圧ケースの中に入れなければならない。この価格がカメラ本体を上回る高額なのだ。ストロボや水中ライトなどを加えると、軽トラック1台をゆうに買える値段になる。

無論、妻は渋い顔だ。購入を逡巡していたが、よい写真を撮るために投資はかかせない。「投資に見合った作品を生み出すから」という言い訳を許してくれるかどうかは、これからの成果にかかってくる。

筆者:大山文兄(フォトジャーナリスト)

取材協力:ダイビングショップ・フリーウェイ

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。

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