1月27日公示の衆院選で与野党が重視するのが経済。成長型経済を実現できるかが各党に問われる。
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衆院が解散され、一礼する高市早苗首相=1月23日午後1時4分、衆院本会議場

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1月27日公示の衆院選で与野党が重視するのが経済である。物価高が生活に重くのしかかり、中国による不当な経済的威圧など対外関係にも懸念がある。これらを克服し、成長型経済を実現できるかが各党に問われる。

特筆すべきは、自民党が公約で消費税減税に舵(かじ)を切ったことだ。これにより与野党のほとんどが消費税の負担減を訴える異例の構図となった。

実質賃金が伸びない中、消費減税が家計を助けるのは確かだが、消費税は膨張する社会保障に充てる基幹税だ。それを減らす負の影響をどう抑えるか。納得できる説明がないと、世論に阿(おもね)る「減税ポピュリズム」との批判は免れまい。与野党は責任を自覚し論じ合ってほしい。

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安定財源の確保明確に

自民は飲食料品の消費税を2年間に限りゼロにする検討を加速すると約束した。年5兆円規模の代替財源や実施時期は示さず、今後、社会保障改革に向けた「国民会議」で議論する。

日本維新の会も同じだ。2年間の実施を視野に検討するとした昨秋の連立合意に基づき、両党は公約として掲げた。

飲食料品の消費税ゼロは高市早苗首相(自民総裁)の持論でもある。ただ、首相就任後は事業者の対応に時間がかかることなどを挙げ、慎重な姿勢をみせてきた。その言動との整合性は丁寧に説明する必要がある。

野党では、立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合が食料品の消費税率を今秋から恒久的にゼロにすると訴え、国民民主党は賃金上昇率が安定的に物価プラス2%になるまで税率を一律5%にする考えだ。ほかにも共産党が直ちに税率5%として将来の廃止を目指すなど、競うように負担減を訴える。

だが、与野党を問わず中身には懸念がある。与党は2年間の時限措置とするが、0%とした税率を元に戻すのは政治的な難度が高い。そのための道筋をもっと明確に示すべきである。

財源確保も総じて不透明だ。高市首相は、赤字国債に頼らず補助金や租税特別措置など歳出・歳入全般の見直しを進める意向だが、巨額の財源を確保するのは容易ではない。中道はファンド創設などで財源を捻出するとしている。これで安定的な収益を確保できるのか。

党首討論会に臨む(左から)共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表、中道改革連合の野田佳彦共同代表、自民党総裁の高市早苗首相、日本維新の会の藤田文武共同代表、参政党の神谷宗幣代表、れいわ新選組の大石晃子共同代表=1月26日午後、東京都千代田区(酒井真大撮影)

飲食料品のみの消費税ゼロなら5兆円、税率を一律5%にすればさらに多くの減収要因となる。その穴埋めを曖昧にしたままの減税先行では社会保障制度の持続可能性に不安を残す。

消費減税は支えが必要な中低所得層よりも、消費額の多い高所得層の恩恵が大きい。中低所得層の税・社会保険料負担を減らすには本来、減税と現金給付を組み合わせた給付付き税額控除の制度設計を急ぐべきだ。自民や中道などは公約に盛り込んでおり議論を深めてほしい。

市場の信認得られるか

気がかりなのは、財政悪化を懸念する金融市場の動きだ。長期金利の水準が急上昇し、円安傾向もみせている。金利上昇は企業経営に影響し、住宅ローンなど家計の負担も増やす。円安は輸入物価の上昇要因だ。

財政運営への市場の信認を失えば、経済に多大な影響を及ぼす。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権だけでなく、野党側も銘記すべきことである。

消費税に限らず、各党の公約には暮らし向上を訴えかける政策が並ぶ。豊かさを実感できない国民の声に政治が向き合うのは当然としても、需要不足が深刻だったデフレ期と異なり、今は人手不足などの供給面に弱さがある。やみくもに財政で消費を刺激すればインフレを助長しかねない点には留意がいる。

高市首相の積極財政路線においても、重要なのは、経済の供給力をどう高めるかだろう。

経済安全保障や食料・エネルギー安保の強化など、民間だけでは解決できない諸課題に政府が積極的に取り組む危機管理投資を高市政権が重視するのは妥当だ。成長の源泉となる人工知能(AI)や半導体など17の戦略分野への投資で国際競争力を高めることにも意義がある。

官民が一体で成長分野を強化するのは、欧米や中国でも顕著な国際潮流でもある。それによって強い経済を実現し、さらなる賃上げなど所得改善にもつなげられるか。中道が教育・科学技術予算を大幅に増やす「未来投資」を掲げ、国民民主は戦略・成長分野を後押しする税制導入などを訴える。与野党間で成長戦略の具体化や実効性を存分に競い合ってもらいたい。

2026年1月25日付産経新聞【主張】を転載しています

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