ミラノ・コルティナ冬季五輪は、日本勢の活躍に国内が沸き立った一方で、SNSなどでは選手らの尊厳を傷つける悪質な投稿が影を落とした。より強い対策で誹謗中傷から選手を守らなければならない。
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フィギュアスケート 男子フリー演技を終え観客の声援に応える三浦佳生=2月13日、ミラノ・アイススケートアリーナ(恵守乾撮影)

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ミラノ・コルティナ冬季五輪は、日本勢の活躍に国内が沸き立った一方で、SNSなどでは選手らの尊厳を傷つける悪質な投稿が影を落としてもいた。

開幕前の1月下旬にはフィギュアスケート男子の三浦佳生が、攻撃的なコメントが送り付けられてきたと明かした。

スポーツにとって憎むべき敵はドーピングと戦争だが、SNSなどでの誹謗(ひぼう)中傷も選手に深刻な打撃を与える。柔道女子五輪金メダリストで日本オリンピック委員会(JOC)理事の谷本歩実さんは「試合の合間にSNSを見る選手もおり、(気持ちが)かなり揺れ動く」と影響の大きさを指摘している。より強い対策で選手を守らなければならない。

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JOCは先の五輪で日本とミラノに拠点を設け、24時間態勢でSNSなどを監視した。管理者側への削除要請は1919件に上り、371件の削除を確認したという。大きな成果には違いないが、1500件以上はまだ残っていることになる。

ポーランドのスキー連盟は大会中、成績が振るわなかったスキージャンプ女子の選手が中傷被害に遭うと、即座に「ヘイトは情熱を殺し、精神を破壊し、スポーツの基盤を攻撃する」と悪質な投稿者らを非難した。祭典の裏側で、競技の現場は過度の負担を強いられている。

SNSは、選手が自身の活動や日常を発信し、ファンと交流する場でもある。寄せられる称賛や激励に力をもらう一方で、悪意あるメッセージを受け取らざるを得ないのも事実だ。

日本勢には海外にルーツを持つ選手も多く、好成績と出自を結びつけて揶揄(やゆ)する投稿も少なくない。「事実に基づく投稿だから」として、管理者側が削除要請に応じないこともあるという。いわば「グレーゾーン」に対しては、スポーツ界が粘り強く協力を求めるしかない。

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五輪マークのモニュメント前で、雪玉を当てられた男の子=イタリア・リビーニョ(恵守乾撮影)

正当な批評の声は、競技力向上や組織運営の是正に欠かせない。しかし、誹謗中傷や感情に任せた悪罵は、残酷で愚かな行為だ。その認識を社会で共有しなければならない。

6日にはパラリンピックが開幕する。スポーツを通じてファンが感動と興奮を分かち合う場として、選手を後押しする場としてSNSを活用できないか。利用者も投稿や拡散をする前に立ち止まって考えてほしい。

2026年3月2日付産経新聞【主張】を転載しています

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