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自覚しづらいイビキの悩み。ひどくて睡眠に支障を来しても、そのまま放置されていることが多い。そんな不調を適切な医療につなげようと、日本睡眠学会は昨年、内科など既存の診療科名に「睡眠障害」を付記できるようにとの要望書を提出した。イビキの放置は、どんな不調を招く可能性があるのか。
「まさか自分が寝ているときに、溺れるように2分も呼吸をしていなかったなんて…。驚くと同時に、これは放っておいてはいけないと思いました」
今年1月、東京都内で開催された睡眠時無呼吸症候群(SAS)の啓発イベント。元プロレスラーでタレントの佐々木健介さん(59)は真剣なまなざしで、SASの可能性を医師に指摘されたときの驚きを語った。
佐々木さんは、かねて、妻で元プロレスラーでタレントの北斗晶さん(58)から、「イビキがうるせえ」と言われ、旅行中にほかの家族にも指摘されてきた。念のためにと、睡眠中の呼吸の状態を検査すると、「無呼吸」の状態が最長で約2分間も続いていた。「日中に疲れを感じても、年齢を重ねたせいだと思っていました。体が悲鳴を上げていたと、やっと気付けました」(佐々木さん)
北斗さんも、「イビキは病気のサインかもしれないと痛感しました。イビキを指摘することは『愛』だと気付きました」と振り返った。

8割が「解消したい」
SAS治療機器のレンタル事業を行う帝人ファーマ(東京都千代田区)は昨年11月、家族からイビキを指摘された全国の男女2350人に意識調査を実施。イビキや無呼吸を解消したいと思う人は約8割に上ったが、特に対策を行ったことはないとの回答が約7割を占め、放置する人が大半を占める実態が浮き彫りになった。また同時に行われた別の調査では、配偶者のイビキを指摘するのをためらう人が多いことも分かった。
睡眠中、ひどいイビキをかくのは上気道が狭くなっているから。その状態が進行し、完全に上気道が塞がってしまうと呼吸が止まる。それがSASだ。常態化すると低酸素で息苦しくなり、睡眠が妨げられる。
厚生労働省の令和5年の調査ではSAS患者は推計47万5000人。潜在患者はさらにいるとみられる。
睡眠の悩みに適切な医療を
「睡眠に問題が生じた場合は速やかに医療機関を受診するのが大事ですが、今の日本では受診までに時間がかかることが少なくありません」
こう語るのは、日本睡眠学会理事長で久留米大学学長の内村直尚医師(69)=睡眠医学=だ。
SASの兆候ともなるイビキをはじめ、睡眠の悩みを適切な医療につなげようと、日本睡眠学会は7年4月、「睡眠障害」という症状名を内科など既存の診療科と組み合わせて表示できるようにとの要望書を厚労省に提出した。実現すれば、「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」「内科(睡眠障害)」「精神科(睡眠障害)」などと表記されるようになる。
SASの診察・治療は主に、循環器内科や呼吸器内科、耳鼻咽喉科で行われている。日本睡眠学会の要望がかなえば、より多くの診療科が受け皿となり、軽度のうちに治療を始められる可能性が高まる。同学会は現在、病院間の治療連携のガイドライン作成を進めているという。
「SASは治療せず放置すると、高血圧や脳卒中などを併発しやすいといわれます。早期に発見し、治療ができれば健康増進も期待できます」と内村さん。
SASの主な治療法はマスクを通して加圧した空気を送り気道を広げる「CPAP(シーパップ)療法」や下顎を前方に固定する「専用マウスピース」の装着など。「診断や治療が円滑にできれば、普段の生活の質の改善も期待できるでしょう」と内村さん。イビキがひどい場合は早期の受診をと呼びかけている。
筆者:竹中文(産経新聞)
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