東京都小笠原村の南鳥島(気象庁提供)
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停滞感の漂う高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分地探しに向けた、積極的な動きである。
赤沢亮正経済産業相が東京都小笠原村に対し、同村の南鳥島において、処分地探しの第1段階である文献調査を受け入れてくれるよう申し入れた。受容すれば全国で4例目となる。国の要請を是認するよう期待したい。
地層処分は、地下300メートル以深の安定した岩盤中に多重のバリアを組み合わせ、核のごみとも称されるHLWを封じ込める国際的に確立した方法だ。
だが日本では原子力発電環境整備機構(NUMO)が候補地を探し始めて四半世紀がたつ今も、文献調査を受け入れたのは北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町の3地点のみだ。

しかも北海道の2町村は次段階の概要調査に進めるかどうかの岐路に立つ。北海道知事の同意がなければ前進できないからだ。
最適な地質条件を備えた処分地を選ぶには、まず10カ所程度で文献調査を行い、最終的に1カ所に絞り込む必要がある。文献調査が3地点のみではあまりに少なく、調査母数をいかに積み上げるかが課題だった。
小笠原村が応じれば、停滞した情勢の打開につながる可能性がある。そのため国が前面に立つのは当然だ。国には最終処分地の確保を含めて原子力政策を着実に推進する責務がある。
南鳥島は、極めて安定した太平洋プレート上に位置し、政府の「科学的特性マップ」でも相対的に好ましい地層処分エリアに分類される。

国有地なので、防衛省や国土交通省の職員が駐在するのみだ。施設の地上部分は小規模で済むため、造成する余地もあろう。以前から、専門家の間では検討対象として注目されてきた経緯がある。
エネルギー安全保障の強化や人工知能(AI)時代の電力需要増大を背景に原発再稼働の動きは進みつつある。この点でもHLWの最終処分地選定は先送りが許されない重要課題だ。
小笠原村の渋谷正昭村長と村民には前向きに検討してもらいたい。電力の大消費地トップとして東京都の小池百合子知事も建設的な姿勢を示すべきだ。
地層処分は特定地域の問題ではなく、国民全体で考えるべき課題である。文献調査地の拡大は、将来世代への責任を果たす上での大きな前進となろう。
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2026年3月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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