米国のイラン攻撃など、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、日本はどのように備えるべきか。都内で小泉進次郎防衛大臣が講演、日本の安全保障の議論を深めた。
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基調講演を行う小泉防衛相(杉浦美香撮影)

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米国のイラン攻撃、ウクライナ戦争…。安全保障が厳しさを増す中、3月3日、国家基本問題研究所の月例研究会で小泉進次郎防衛相が登壇、日本の安全保障政策の目指すところを語った。

「インド太平洋と欧州大西洋は一体不可分」

基調講演を行った小泉防衛相は、故安倍晋三首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を振り返った。

2007年に安倍(元)首相がインドで行った『2つの海の交わり』と題したスピーチで、「太平洋とインド洋は自由と繁栄の海としてダイナミックな結合をもたらしている」と語ったことを紹介。そのうえで、「今はそれが拡大・進化し、欧州・大西洋が加わった」と指摘した。

基調講演を行う小泉防衛相(杉浦美香撮影)

背景には、欧州の安全保障とインド太平洋の安全保障が密接に結びついていることがあるという。「イタリア、英国、NATOの友人からインド太平洋と欧州大西洋の安全保障は一体不可分だと定例句のようにいわれる」と続けた。

「北朝鮮の1万人以上の兵士がロシアに送られ、そこで(ウクライナ戦争における)最先端の戦いを覚え、持ち帰る。それをどこに向けようとしているかはいうまでもない」と述べ、ウクライナ戦争が遠い欧州で起きている問題ではなく、北朝鮮と対じしている日本の問題であることに言及した。

「あらゆるものの武器化」の懸念

小泉防衛相は現代の特徴として、軍事だけでなく、あらゆる分野が安全保障に結びついていることに言及した。

「経済、資金決済、技術、資源、情報、そしてサイバー空間。これらあらゆるものが武器化されている」

こうした状況を踏まえ、日本は国家安全保障戦略など「戦略3文書」の改定を進めていると説明した。

パネルディスカッションの様子(杉浦美香撮影)

大きな柱として①ドローンなどの新しい戦い方への対応②持久戦に耐える「継戦能力」③太平洋防衛―の3つをあげた。

さらに、「素晴らしい構想を作っても、最後は人が重要」としたうえで、自衛隊員の処遇改善や人的基盤の強化を重視していると語った。

最後に、国民、同盟国、同志国の支持基盤を強めていきたいとしたうえで「これからも日本が平和で守るべきものを守り、未来につながっていくように期待したい」と述べた。

台湾有事「来年の危険性」

基調講演のあと、櫻井よしこ・同研究所理事長、湯浅博・産経新聞特別記者、岩田清文・元陸上幕僚長らが加わり、パネルディスカッションも行われた。

岩田氏は、ロシアは、トランプ大統領が提示したロシアに有利な和平案も拒否しており、ウクライナ戦争は、ロシアがこれ以上戦えないと思うところまで続くと思ったほうがいいと指摘。世界は弱肉強食の時代になってしまったという見解を示した。

フロアから参加した元海上自衛隊陸将、吉田正起氏(杉浦美香撮影)
パネルディスカッションを行う湯浅博氏(杉浦美香撮影)

そのうえで、統制がとれた中国の漁船が昨年、今年と100~2000隻規模で東シナ海に集結していることや、中国共産党が軍人幹部を粛清し、習近平(総書記)の台湾攻撃を止められる勢力がいなくなったことを意味すると指摘した。

櫻井氏は一連の状況を踏まえ、「中国が来年、台湾侵攻する可能性が高まっている」という見解を示した。

パネルディスカッションを行う櫻井よしこ氏(杉浦美香撮影)
パネルディスカッションを行う岩田清文氏(杉浦美香撮影)

湯浅氏は国際情勢を見極めるためには「誰が得するのか」という視点の重要性を説いた。そして、米国のイラン攻撃に触れ、「(米国が)イランの核開発の阻止に失敗すると、インド太平洋における力の空白を中国が埋めてくるかもしれない」としたうえで「日本は非常に危険な立ち位置にある」と述べた。

誤ったメッセージを送らない

パネルでは、日本の防衛力強化の必要性の議論も行われた。

パネルディスカッションの様子(杉浦美香撮影)

小泉防衛相は欧州での議論に触れ、「日本も自前の力をつけることが必要。日本が強くなることが同盟国、同志国にとっての安心材料になる」「侵攻したら優勢をとれるかもしれない、といった誤ったメッセージを送らないことが重要」と語った。

「新たな戦争や紛争は絶対に起こさせない。そのための十分な抑止力と防衛力を持たなければならない」という認識を示した。

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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