高市早苗首相が訪米し、3月19日にトランプ大統領との公式会談にのぞむ。ワシントンから現状を報告し、高市首相が米国側に伝達すべき事項への提言をも述べる。
unnamed

高市首相(左)と、トランプ米大統領(ロイター=共同)

This post is also available in: English

高市早苗首相が3月中旬にアメリカを訪問し、19日にはドナルド・トランプ大統領との公式会談にのぞむ。高市首相を迎えるワシントンでの米側の反応をみると、同首相を歓迎する傾向は超党派で顕著だといえる。トランプ政権の保守主義を共通基盤とするような高市政権との緊密な連帯はすでに確実だが、議会の野党の民主党議員の間でも高市首相歓迎の態度は広範である。ワシントンからその現状を報告し、高市首相がアメリカ側に伝達すべき事項への提言をも述べてみたい。

G7首脳オンライン会議に臨む高市首相=3月11日(©首相官邸)

トランプ大統領自身の高市首相への連帯感は昨年10月の同大統領の訪日以来、再三、明示されてきた。首脳会談での日米同盟の黄金時代の強調、アメリカ海軍の空母での両首脳の同盟強化の誓約、さらには日本の総選挙直前のトランプ大統領による異例の高市首相勝利への希望表明と、その根拠は多数ある。

だがトランプ政権の政策にはほぼ何でも反対する民主党の反応はどうか。議会の民主党側でも高市首相訪米への歓迎が多いことは私自身が議会内での集会に出て実感した。

私は3月5日の夕方、連邦議会上院の議員会館内での「日本酒レセプション」と題されたパーティーに出席した。超党派の議員たちが加わっての日本酒の生産の各州での広がりを語り、祝うという珍しい集いだった。在米日本大使館と米側生産者の「北米酒造組合」が連邦議会に呼びかけて開かれた会合だった。米国では近年、日本酒への人気が高まり、合計十州で醸造工場が開かれた。

連邦議会側からは合計7人の現職議員が参加した。そのなかでカリフォルニア州選出のマーク・タカノ下院議員(民主党)は壇上に立って「日本初の女性総理の高市氏の来米直前の時期に日本酒普及を祝うのはまさに日米友好の象徴だ」と言明した。

タカノ議員は名前が示すように日系米国人で、連邦議会の下院では当選7回のベテランである。下院では教育委員会や退役軍人問題委員会で活動してきた。外交政策では民主党穏健派としてトランプ政権の政策に反対することも多いが、こと対日政策では歩調をあわせ、高市首相の就任を改めて祝い、アメリカ訪問を歓迎すると表明したのだった。

他の民主党議員たちも高市首相の訪米を温かい言葉で高市氏が日本の初の女性首相となったことへの祝意やワシントン訪問への歓迎を表明していた。この種の表面的な言葉だけで議会民主党側全体の意向を断定はできないが、そもそも民主党も日米同盟堅持という基本政策には積極的な賛意を明示してきた。そのうえに高市首相や高市政権への議会民主党からの否定的な言辞はまったく出ていないのだ。だから超党派の歓迎と総括してもよいだろう。

さて高市首相はアメリカ側に対してなにを伝え、なにを求めるべきだろうか。米側の期待はなにか。最近のワシントンでのトランプ陣営やその他の専門家たちの言明に耳を傾けながら、私なりの考察を3点にまとめてみた。

2025年10月に行われた日米首脳会談=東京赤坂・迎賓館(©首相官邸)

第一は当然ながら高市首相は日米同盟の強化と拡大の意向を表明すべきである。ただしその同盟を単なる二国間の効用に留めず、いまの世界の激動のなかでアメリカが求める国際秩序の再建への寄与という国際レベルでの効用をも強調すべきだ。

トランプ政権はベネズエラへの攻撃ではアメリカ国内への合成麻薬の密輸出を政府がらみで押してきたマドゥ―ロ政権を倒し、大統領を米国の国内法違反で逮捕した。イランに対しては長年のテロ行動への制裁と核兵器開発の阻止という目的で攻撃をかけた。この行動にはアメリカ国内でも日本でも反対はあるが、同盟国の日本としては米側の行動の背後にある反米陣営の膨張の防止という要素をも重視すべきだろう。

トランプ大統領はイラン攻撃の直接の軍事行動に日本の参加を求めることは考えられないが、イランによるホルムズ海峡航行妨害の措置への対応では同大統領はすでに日本の名をあげ、その意向を探る言明をした。日本側は掃海活動の可能性も含めて前向きな姿勢を示すべきだろう。

ホルムズ海峡を航行する船舶=3月2日、オマーン沖(ロイター)

なお日米同盟の国際拡大については米側でも国際戦略の重鎮ウォルター・ラッセル・ミード氏は昨年12月に発表した論文でも高市政権の日米同盟強化を通じての抑止効果が地域各国や同志諸国の安全保障に寄与する展望を歓迎していた。

第二には高市首相はトランプ政権にもアメリカ議会にも日本の保守主義を説明し、その実態が日本を国際基準で普通の国にすることだと伝達するべきである。

高市、トランプ両氏は自国の利益を優先し、歴史や伝統を重視し、対外的には「力による平和」策を信奉するという点でともに保守主義だといえよう。だが日本の場合、占領米軍に押しつけられた憲法のために自国の安全保障を含めて防衛努力には規制が欠けられている。自衛のための軍隊も持てないという点で国際的には異端のハンディキャップ国家でもある。その結果、外国のスパイ活動を違法だとする法律もない。政府全体のインテリジェンス機関もない。日本の保守主義とされる主張の主要部分はゆがんだ国家の正常化、通常化への希求なのだ。

ちなみにアメリカの歴代政権も日本の正常化の核心である憲法の改正にはすでに賛意を表してきた。トランプ氏が大統領になる前に日米同盟の片務性を批判したのもその根源は日本の現行憲法に起因する商談的自衛権の規制だった。

ホワイトハウス(共同)

第三は高市首相はアメリカ側に改めて中国との紛争での日本の強固な立場を説明するべきである。大統領だけでなく議会にも明確にすべき日本の態度だと
いえる。

日本側では一部の識者がトランプ大統領の中国への抑止の姿勢の基本が軟化したという推測を述べている。だがワシントンでの考察からはそんな実態は浮かんでこない。経済問題で当面の対中策の一部を柔軟にするという気配はあっても中国をいまのアメリカへの最大の脅威とみる基本は不変なのだ。そんな実態のなかで高市首相の毅然として対中姿勢はむしろ歓迎されている。

前述の議会でのパーティーで有力議員から意外な反応を聞いた。サウスカロライナ州選出のジョー・ウィルソン下院議員(共和党)に高市首相の来訪に関して米側でとくに重視する点はなにかと問うと、次のような答えが返ってきたのだ。

「まず高市首相に米側からのサンキューという言葉を伝えたい。なぜなら高市首相が中国に対して毅然たる態度をとってくれたからだ。その態度は米国の政策や戦略利益に資するのだ」

ウィルソン議員はもちろん高市首相の台湾有事に関する国会での発言とそれに対する中国側の多様な威嚇や制裁の言動を知っていて、高市首相の堅固な態度を賞讃しているのだった。

米連邦議会議事堂(共同)

同議員のこの言葉は重要だといえる。なぜなら同議員は連続当選13回の超ベテランでトランプ政権にもきわめて近いからだ。下院全体でも共和党の首脳部に近く、外交委員会、軍事委員会で活躍してきた。中国やロシアに対する強固な政策は保守派のなかでもとくにトランプ大統領の思考に至近だとされてきたのである。

以上がワシントンでの国政の現況を踏まえての高市首相の訪米への私自身の考察と提言である。

筆者:古森義久(ジャーナリスト)

This post is also available in: English

コメントを残す