ホワイトハウスで会談する高市首相(左)とトランプ米大統領=ワシントン(共同)
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訪米した高市早苗首相がワシントンのホワイトハウスで、トランプ米大統領と会談した。
最大の懸案だったイラン情勢への対応を巡って両首脳の間に亀裂は生じず、会談は和やかな雰囲気で進んだ。
中東での戦火に加え、ロシアのウクライナ侵略が続いている。日本周辺では中国と北朝鮮の脅威が高まっている。厳しい国際情勢の下で、両首脳が強固な日米同盟の姿を内外に示したことを評価したい。

「台湾海峡」を確認した
国民の安全と国益を考えれば、日本の首相は唯一の同盟国である米国の大統領と良好な関係であらねばならない。会談で高市首相が「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と述べ、ファーストネームを使ってトランプ氏に賛辞を贈ったのは間違っていない。
イランについて高市首相は「核兵器開発は許されてはならない。日本は周辺国に対する攻撃やホルムズ海峡の実質的な閉鎖も非難してきた」と語った。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)が非協力的だとし、日本は「NATOと違う」と評価した。その上で「日本に(支援の)ステップアップを期待している」と述べた。
高市首相は、トランプ氏が一時求めたホルムズ海峡でのタンカー護衛のための海上自衛隊艦船の派遣について、日本の法的な制約を説明し、可能な貢献を行う意向を伝えた。
日本は原油輸入の9割超を中東に依存し、その大半がホルムズ海峡を通過してきた。同海峡のタンカー通航問題は解決していない。日本が事態沈静化へ外交努力を続けるのは当然だが、海自派遣問題がなくなったわけではない。高市首相は護衛艦や掃海部隊の派遣の検討、準備も進めておくべきだ。

両首脳は、台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄に不可欠だとの認識を共有し、一方的な現状変更の試みに反対することで一致した。トランプ氏は4月下旬にも訪中するが、その前に改めて日米の立場を確認したことはよかった。
「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進や、ミサイルの共同開発・生産を含む幅広い安保協力で一致した。

北朝鮮による日本人拉致問題では、トランプ氏から改めて即時解決に向けた全面的な支持を得た。米国の対北圧力などで拉致被害者全員の早期解放につなげねばならない。
会談でエネルギーや経済安保の協力を深化させたことも重要だ。両首脳は日本の原油調達を念頭に米国産エネルギーの生産を拡大するとの認識を共有した。首相は日本が調達する米国産原油を備蓄する共同事業を提案した。ホルムズ海峡や南シナ海を通らない海上輸送路を使う米国産原油の確保はエネルギーの安定供給に大いに資する。
南鳥島沖のレアアース(希土類)を含む鉱物資源開発などでも協力強化を確認できた。日米は、レアアースの輸出規制などで経済的威圧を強める中国への依存を脱し、サプライチェーン(供給網)を強める共通の目標がある。欧州諸国や資源国との連携強化にもつなげたい。
日本の欠陥浮き彫りに
関税合意に基づく対米投資の第2弾も発表した。気がかりなのは、米政府が相互関税の代替措置とする追加関税の扱いだ。日本が不利にならないか。日本企業などが相互関税返還を求めている課題もある。米側が明確な対処方針を示すよう高市政権は働きかけを強めるべきだ。
首相の訪米は不安視されていたが成功裏に終わった。出方を読み切れないトランプ氏を相手に首相や関係者の払った努力は並大抵のものではなかったはずだ。頭が下がる思いがする。

ただし、イラン情勢と首相訪米は日本という国が抱える欠陥、課題を浮き彫りにしたと指摘せざるを得ない。現憲法や安保関連法、防衛省設置法などの体系では自衛隊の海外派遣に依然多くの制約がある点だ。
現時点では石油備蓄に余裕があるが、イラン情勢の展開次第では各国海軍によるタンカー護衛が必要になる可能性はゼロではない。そのような事態に直面してもなお日本は自国向けタンカーの護衛を外国に依存するのか。もし米国や関係国が断ってきたり、法外な条件を付してきたりしたらどうするのか。難局に立ち往生せず、自らの判断で行動する日本に生まれ変わる必要がある。高市政権は真剣に考えてもらいたい。
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2026年3月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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