連合の記者会見=3月23日午後、東京都千代田区
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イラン情勢の緊迫化で原油価格が高騰し、一段の物価上昇が懸念されている。
そのさなかに、自動車や電機など主要企業の春闘の回答が一斉に行われ、トヨタ自動車をはじめ多くの企業が労組の要求に対して満額を回答した。
原油価格の高騰は企業業績に悪影響を及ぼすことが懸念され、物価上昇を通じて国内景気を冷やす要因ともなりかねない。そうした中で、賃上げを継続しようとする経営側の姿勢を歓迎する。この流れを今後、労使交渉が本格化する中小企業に波及させたい。
春闘では令和6、7年と2年連続で5%台の賃上げが実現した。だが、物価変動を加味した実質賃金は昨年1年間、一度もプラスに浮上しなかった。ガソリン減税など政府の物価高対策の効果もあって、今年1月に13カ月ぶりに増加に転じたが、水を差しかねないのがイラン情勢の緊迫化だ。
戦闘長期化で原油価格の高値が続けば、実質賃金は再びマイナスになる可能性が高い。物価上昇と景気停滞が同時に進むスタグフレーションに陥る懸念もある。賃上げ余力のある大企業が高水準の賃上げを続けることは、個人消費を起点にした経済の好循環を実現し、景気の腰折れを防ぐ意味でも重要だ。

問題は雇用の7割を占める中小企業である。中小企業では、賃上げ実施予定企業のうち業績改善を伴わない「防衛的賃上げ」が約7割に上り、全体の8割近くが賃上げ継続に負担を感じているとの調査もある。原油高騰でコスト負担の増大が見込まれるだけに、中小企業の上昇したコストを取引価格に適正に転嫁することが求められる。
一方的な取引価格の決定を禁じた中小受託取引適正化法(取適法)が1月に施行された。大企業は自社の取引状況を点検し、コスト転嫁を受け入れることが必要だ。
取引企業が賃上げできずに人手不足に陥ったり、業績悪化で設備投資が滞ったりすればサプライチェーン(供給網)の弱体化を招く。困るのは大企業などの発注する側である。
中小企業のコスト受け入れは、持続的な成長に不可欠な投資だ。イラン情勢の緊迫化で、経済の先行きが懸念される中だからこそ、その認識を社会全体で共有したい。
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2026年3月19日付産経新聞【主張】を転載しています
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