インタビューに応じる北朝鮮の元外交官、李日奎(イ・イルギュ)氏=ソウル市内(時吉達也撮影)
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北朝鮮の元外交官で2023年に韓国に亡命した李日奎(イ・イルギュ)氏がソウルで産経新聞の取材に応じ、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない「特定失踪者」の木村かほるさん=失踪当時(21)=について「平壌の商店で販売員として働く姿を明確に覚えている」と証言した。
知人女性と同じ商店の販売員
拉致問題を巡る日朝交渉が停滞し被害者家族の高齢化が進む中、支援団体関係者は新証言が事態の打開につながるよう期待を寄せている。
李氏は在キューバ大使館の参事官などを務めたエリート外交官で、23年に韓国に亡命した。25年に発表した著書では、朝鮮労働党工作員を務めていた女性とキューバ留学時代に知り合い、のちに平壌市内の富裕層向け商店で再会したエピソードを披露していた。
李氏は取材に対し、この知人女性と同じ商店に販売員として勤務していた日本人女性が、写真の木村さんの特徴と一致すると証言。1994~95年ごろに2回顔を合わせたといい、「社交的でよく笑う印象だった」と振り返った。

これまでに特定失踪者など拉致被害の可能性がある日本人10人以上の写真を確認したが、面識があるのは木村さん一人のみだという。
過去に金賢姫元工作員の目撃情報も
李氏は拉致問題について「金正恩(キム・ジョンウン、朝鮮労働党総書記)にとっては父親(金正日=ジョンイル=総書記)が事実を認めた問題であり、解決はそれほど難しい課題ではない」と指摘。米朝関係が改善され国際社会による制裁が解除されれば「北朝鮮は日本による経済支援の見返りを求め、(拉致問題解決に)かなり前向きに動くだろう」との見方を示した。
木村さんは青森県八戸市出身。昭和35(1960)年に行方不明になった。過去にも、大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(ヒョンヒ)元工作員が、北朝鮮で日本語を習った日本人と木村さんが「よく似ている」と証言するなど目撃情報が出ていた。
「新証言が突破口になること願う」
拉致問題を調べる「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表は「拉致問題を巡る新情報の少なさが報道の減少や世論の関心低下を生み、政府の活動を鈍らせる悪循環を招いてきた。新証言が交渉を活性化させる突破口になることを願う」と話している。

膠着(こうちゃく)する拉致問題の解決に向け、高市早苗首相は3月19日の日米首脳会談で金正恩氏との会談実現に意欲を示し、トランプ米大統領も解決に向けた取り組みを支持した。一方、金正恩氏の妹、金与正(ヨジョン)・朝鮮労働党総務部長は23日、拉致問題が前提となるなら会談を拒絶するとの談話を発表した。
筆者:時吉達也(産経新聞ソウル支局)
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