尖閣諸島(沖縄県)周辺の領海に侵入した中国海警局の公船2隻が、付近で操業していた日本漁船を追尾した。海上保安庁の巡視船が割って入り、中国公船に領海から出るよう警告した。
巡視船が尖閣の守りを果たしたのは心強い。
政府は中国に抗議したが、中国公船は3日にわたり領海侵入を重ねた。
中国海警局はブログで「(同局の)艦隊が5月8日、中国の釣魚島(尖閣の中国名)の領海内を巡視している」と宣伝した。中国外務省報道官は海保巡視船が「違法な妨害を行った」と非難した。中国公船が「違法操業」の日本漁船を「法に基づいて追尾・監視」したとも語った。
「盗人たけだけしい」とはこのことだ。違法行為を働いたのは中国側のほうである。
尖閣諸島は日本固有の領土である。尖閣海域で法執行を行う権利を一切持たない中国海警局による行動は、日本の主権を踏みにじるもので、到底容認できない。
とりわけ今は、新型コロナウイルスをめぐり国際協力が欠かせないときだ。中国側の挑発はこれに水を差すだけである。
そもそも、尖閣は自分のものだという中国の主張が荒唐無稽なのである。尖閣は明治28年に沖縄県に編入された。中国から奪ったわけではない。
中国は尖閣を日本領だと長く認めてきた。中華民国の長崎領事は大正8年、遭難して尖閣に漂着した中国・福建省の漁民31人を救援した日本人へ感謝状を出した。そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されていた。
中華人民共和国の建国後、共産党機関紙「人民日報」(昭和28年1月8日付)は琉球諸島を構成する島々の一つに「尖閣諸島」を挙げていた。
中国が尖閣への領有権を唱えだしたのは昭和46年12月である。国連機関により周辺に海底油田がある可能性が指摘されてからだ。
中国が尖閣を先に見つけたというが証拠はない。また、発見や地理的な距離だけでは領有権を正当化できない。
国際法上、領有する意思のもとで持続的かつ平和的に領有主権を行使していなければならないからだ。その点から尖閣が日本の島であることは明白である。
中国は平和を乱す強欲な野望を捨てるべきだ。
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2020年5月17日付産経新聞【主張】を転載しています