中国共産党政権が大学生らを武力弾圧し、多数の死傷者を出した天安門事件から6月4日で31年がたった。血の弾圧で中国の民主の芽は摘み取られた。
日本は事件後、何ら反省しない共産党政権が国際社会に復帰することに手を貸すという失策を演じた。そして今も甘い対中姿勢をとり、香港やウイグル問題で似たような過ちを繰り返す瀬戸際に立っている。
中国の習近平政権は国家安全法導入を強行し、香港から自由と民主を求める動きが失われつつある。香港では初めて事件追悼の集会が禁止された。
このような深刻な事態を前にしても安倍晋三政権や国会、与党の動きは鈍い。政府は香港問題へ深い憂慮を表明するにとどまり、抗議の声をあげていない。米国のような香港人権法もなければ、英国や台湾のように市民権付与や移住で香港市民を助ける動きもない。国会は対中非難決議一つ出せない。傍観したままでいいのか。
新型コロナウイルスの感染拡大で延期された習国家主席の国賓来日を、政府・与党はなお課題としている。茂木敏充外相は11月の20カ国・地域(G20)サミット以降になるとの見方を示した。
日本維新の会や日本共産党は香港問題などで習政権を批判した。国家安全法反対の署名に加わった与野党議員もいる。自民党外交部会は6月4日、中国政府を非難し国賓来日の再検討を促す決議をまとめた。
だが自民党の二階俊博幹事長は香港問題について「他国の政治行動にとやかく述べるのは適当でない。慎重に見守っていく」と述べた。公明党の山口那津男代表は香港問題に苦言を呈しつつも国賓来日実現へ努力すべきだとした。
弾圧の責任者である習氏を、天皇陛下自らもてなされる国賓にするなどあってはならない。日本の品格も問われる。また、国賓来日時に天皇ご訪中を求められたらどうするつもりなのか。
日本は「天安門」後の対中制裁に加わったが、事件の3年後には天皇ご訪中を実現してしまった。共産政権の国際社会復帰を後押しし、傍若無人に振る舞う中国を育てたのである。
米国などは国際ルールを守るよう中国に迫っているが日本の腰の引けた対中姿勢はその努力に水を差す。「天安門後」の教訓を踏まえ、国賓来日を白紙に戻し米国と足並みをそろえるべきである。
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2020年6月5日付産経新聞【主張】を転載しています