日米が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想の具体化に資する意義は大きく、歓迎したい。地域の主要国であるオーストラリアとインドが安全保障面の協力強化で合意した一件だ。
モリソン豪首相とモディ印首相がテレビ会議形式で会談し、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の実施などを決めた。
南北米大陸からアジアを経てアフリカ東岸に至る広大な地域で、国際ルールに基づき平和と安全を守り、経済的繁栄を目指す。
そのための中心的役割を、自由や民主主義といった価値観を共有する日米豪印の4カ国が果たさなければならない。中国の覇権追求は断じて認められない。
インドと中国は、両軍が国境地帯でにらみ合いを続け、衝突によりインド側で20人が死亡する事態に発展した。中印国境対立で死者が出るのは45年ぶりである。
中国はコロナ禍のさなか、東・南シナ海を含め、拡張主義的な動きを活発化させている。国民の目を領土問題に向けようとしているとみられても仕方あるまい。
中国は、ウイルス感染拡大に関する独立調査を求めた豪州に対し、農産物の輸入制限や旅行の自粛という報復で応じた。高圧的態度も同様の思惑からだろう。
日米豪印の4カ国は、個別の2国間でも外交・軍事面で連携しているが、同盟関係にある日米や米豪、首脳間の相互訪問を重ねている日印、日豪と比べ、豪印の関係は薄かった。
豪州にとって中国は、輸出額の3割を占める最大の貿易相手国である。インドも中国との経済的結びつきが強く、豪印両国は中国に一定の配慮をしてきた。インドが海上自衛隊と米印海軍の合同訓練「マラバール」への豪州参加を拒んできたのもその表れだ。
豪印の安全保障面での接近は、中国への強い圧力となる。日米との一層の連携で、覇権追求に歯止めをかけなければならない。
注目すべきは、豪印首脳会談で両国の海洋協力について力点が置かれたことだ。海洋協力に関する共同宣言が発表され、航行の自由の重要性をうたい、中国の海洋進出を念頭に、国際ルールにそぐわない行動に懸念を表明した。
インド太平洋構想に沿った意思表示である。こうした理念を、日米豪印を中心に、東南アジア諸国など地域各国に浸透させたい。
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2020年6月23日付産経新聞【主張】を転載しています