Reelected Tokyo Governor Yuriko Koike 003

 

東京都知事選で、現職の小池百合子氏が再選された。新型コロナウイルスが都民の暮らしを揺るがし、東京五輪・パラリンピックが延期される激動期の選挙を制した。

 

小池氏が勝利の余韻に浸っている時間はない。都内では1日当たりの感染者が連日100人を超え、感染再拡大が現実の脅威となりつつある。

 

再び都民の社会経済活動に自粛が求められるのか。休業要請はどうなるのか。多くの都民が先行きの見えない新しい日常に不安を覚えている。小池氏には、これを払拭する感染防止の具体的な戦略を早急に示してもらいたい。

 

東京五輪を成功に導くには、まず開催地の東京でコロナ禍を克服する必要がある。また、感染症は過密都市の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。これを踏まえて首都の防災機能も高めなくてはならない。

 

すべては足元の危機に適切に対応することが大前提であることを忘れてはならない。

 

問われているのは公約の実現である。小池氏は「東京大改革2・0」として、感染症対策を最優先課題に掲げた。その目玉が東京版CDC(疾病対策予防センター)創設だが、まずは構想の詳細を示し、国との役割分担を含めて議論を深める必要があろう。

 

PCR検査体制の強化や重症・軽症者の医療体制の整備、病院・医療従事者へのサポート強化なども訴えた。疫学的調査の強化や国との連携による水際対策、生活資金、住まい確保などのセーフティーネット機能強化も掲げた。いずれも大事な政策だが、重要なのは着実に実現できるかどうかだ。

 

小池氏は前回知事選で待機児童ゼロや介護離職ゼロといった「7つのゼロ」を掲げたが、そのほとんどは達成できていない。同じ轍(てつ)を踏むことは許されない。

 

国との協調姿勢も改めて問われよう。再び本格的に感染が広がる事態となれば、国が緊急事態宣言を再発令するかが現実的な検討課題となる。そのとき都はどう対応するか。4月の発令時には経済への影響を懸念する政府との軋轢(あつれき)もあった。こうしたことを繰り返せば影響を受けるのは都民だ。

 

首都東京の知事には、日本全体の社会経済活動を復活させる牽引(けんいん)役としての役割も期待される。小池氏はそのことを銘記し、魅力ある東京の街づくりに全力で取り組んでもらいたい。

 

 

2020年7月6日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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