ネットでもリアルでもいい。自民党総裁選は、候補者同士が直接対決する討論会を多く設定するなど、活発な政策論争を展開してもらいたい。
安倍晋三首相の後継を決める自民党の総裁選が8日告示、14日投開票の日程で行われることになった。
自民党総務会は、党則第6条にある「特に緊急を要するとき」に当たるとして、党員・党友投票を省き、両院議員総会で選出することを決めた。394票の国会議員票と141票の地方票(都道府県連各3票)で争う。
100万人以上いる党員・党友の投票を実施しないのは残念である。多くの国民は自民党に属してはいないが、党員投票があれば、総裁選や政治への関心が一層高まる。それが新しい首相の求心力や党勢に影響し、政治の安定に結び付く。
このため、若手議員や地方組織の一部から党員投票を求める声があがっていた。遅くとも来年秋までに実施される衆院選に備え、党員の活性化を図りたい思惑もあったようだ。
ただし、両院議員総会による選出は党則に定められている通り、ルール違反とはいえない。平成19年の第1次内閣当時の安倍首相辞任後や、翌年の福田康夫首相の辞任後も自民党は同様のやり方で新総裁を選んでいる。
告示から投開票まで短期間になるが、総裁選で何より大切なことは何か。それは、候補者が国民の前で政見を競い合うことだ。
岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長は1日、出馬会見した。菅義偉官房長官も2日に表明する。
いずれもベテランである。日本のために推進したい政策を、あまた持っていると信じたい。
新型コロナウイルス禍とそれに伴う経済的な苦境、中国や北朝鮮の脅威など、内外ともに多事多難なときである。
国政の重要課題に、どのような政策をもって臨むのか。現下の危機を乗り切る方策にとどまらず、憲法改正や人口減少対策など国家百年の計も明確に示すべきだ。
コロナ禍の中で6~7月に行われた東京都知事選は、候補者がネットも活用したが活発な論戦にはならなかった。街頭に多くの人を集める遊説はコロナ禍以前のようにはいかないだろうが、総裁選は都知事選の轍(てつ)を踏まずに国民をうならせる論戦にしてほしい。
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2020年9月2日付産経新聞【主張】を転載しています