昨シーズンに続きサンマが記録的な不漁だ。
ここ数年、品薄で価格も高騰し、食卓にのぼる機会も減っている。
原因は、外国の大型船による乱獲で資源量が減ったのと、海水温の上昇で魚群が北方海域に移ったためとみられる。
秋刀魚と書くこの魚は文字通り、秋の味覚の代名詞だ。日本人にとって季節を丸ごと食べる食文化でもある。これを将来にわたって楽しみ続けるためにも、資源保護に向け、国際的なルールづくりが欠かせない。
サンマ水揚げ量が日本一の北海道根室市の花咲港で先月下旬、サンマ漁の大型棒受け網漁船が今年初めて水揚げした。量は数トンで昨年初水揚げした500トンと比べると大幅な減少となった。
サンマは夏から秋にかけて産卵のために北太平洋から日本近海に来遊する。それを中国や台湾の漁船が、日本の排他的経済水域(EEZ)手前の公海で先取りしたり乱獲したりしてきたことが不漁に拍車をかけているとみられる。小型船が多く、近海での漁が主体の日本への被害は甚大である。
菅義偉官房長官は会見で、「資源管理の強化を図ることが極めて重要だ」と語った。
急ぐべきは、国別の漁獲割り当ての順守だ。だが、2015年から毎年開催してきた北太平洋漁業委員会(NPFC)が新型コロナウイルスの影響で延期され、来年の漁獲割り当てについての協議が進んでいない。昨年、最終的に割り当てに応じたが、それに否定的な中国などを説得する必要がある。割り当て強化を求めるロシアなど他の加盟国を巻き込んでの取り組みが欠かせない。
NPFCは、日本や中国、台湾など8カ国・地域が、サンマの資源管理を話し合う国際機関だ。昨年初めて、今年の漁獲割り当ての導入で合意したが、公海とEEZで年約55万トンに止(とど)まった。
最近の漁獲量である44万トンを上回る緩い内容だけに、資源保護の点で効果は疑問が残る。科学調査により、さらなる制限が必要と判断した場合は、各国への働きかけを強めていくべきだ。
NPFCが決めた衛星による各国の船位監視装置の厳格な運用のほか、操業隻数や水揚げ量、輸出入など細かなデータ分析も欠かせない。日本が主導し、各国が割り当てを守っているか、厳しく監視していく必要がある。
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2020年9月2日付産経新聞【主張】を転載しています