中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官が11月30日、アフガニスタン派遣のオーストラリア軍による民間人らの違法殺害問題への非難をツイッターに投稿した際、出所不明のCG画像を添付し物議をかもしている。
豪軍兵士がアフガンの子供ののど元に血まみれのナイフを突き付けた画像だ。モリソン豪首相は「フェイク(偽の)画像だ。中国政府は完全に恥じるべきだ」と反発し、削除と謝罪を求めた。
趙氏の上司である中国の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は「犯罪行為を非難することが不当なのか」と擁護し、豪側の要求に応じなかった。画像はインターネットで見つけたもので誰が作ったか分からないとした。
香港や新型コロナウイルスをめぐる豪州の批判に中国は反発し、豪産品の輸入停止、制限などで不当な圧力をかけている。
緊張関係にある豪州を根拠の示せない画像で貶(おとし)めるのは公正でなく、悪質な宣伝といえる。中国政府は趙氏の投稿を謝罪し、画像を削除しなければならない。
豪軍は11月、2009年以降にアフガン派遣部隊の兵士が現地の民間人ら39人の違法な殺害に関与していたとする報告書を発表し、アフガンの人々に「心から謝罪」した。刑事処罰に向けて捜査が始まっている。違法な殺害は決して許されない。豪軍は内外から批判されている。
だからといって、出所不明の疑わしい画像を用いて攻撃するのは筋違いだ。フランス外務省の報道官が「中国のような国の外交に期待される手法として不適当だ」と批判したのは当然である。
趙氏は今年3月、新型コロナをめぐって「米軍が感染症を武漢に持ち込んだかもしれない」とツイッターに投稿した。これも根拠を示しておらず、ポンペオ米国務長官が「今はデマを拡散したり奇怪な噂を流したりしている場合ではない」と抗議した。趙氏は11月には、香港をめぐる米英豪など5カ国の外相声明に反発して「目を突かれて失明しないように気を付けよ」と言い放った。
攻撃的なスタイルから、趙氏は「戦狼外交官」と呼ばれる。根拠に欠ける非難や無頼漢のような言動を繰り返す趙氏が、謝罪も反省もなく働き続けているのは中国政府が是としているからだ。このままでは中国の品位と信用が傷つくばかりであると気づき、改めるべきである。
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2020年12月2日付産経新聞【主張】を転載しています