菅義偉(すが・よしひで)首相は28日未明、バイデン米大統領と電話会談を行い、日米同盟をさらに強化することで一致した。バイデン氏は日本が他国の脅威から脅威を受けた場合、米軍の核兵器で守る「核の傘」を含む拡大抑止力を提供する意向を表明。4月22日にテレビ会議方式で行われる地球温暖化問題に関する首脳会議(サミット)に、首相を招待した。首相の訪米に関しては、新型コロナウイルスの感染状況を見極めつつ、可能な限り早い時期で調整することを申し合わせた。
両首脳の会談はバイデン氏が昨年11月の大統領選に勝利して以降2回目で、バイデン氏就任後は初めて。バイデン氏にとって、アジアで最初の会談相手が首相となった。両首脳は「ヨシ」「ジョー」とお互いのファースト・ネームで呼び合うと決め、今後も電話でのやり取りを続けることを確認した。
会談で両首脳は、自由主義陣営共通の価値である「法の支配」などを脅かす中国を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて連携することで一致した。同席した坂井学官房副長官によると、双方からFOIPに関する言及があったという。トランプ前米大統領が求めた在日米軍駐留経費の増額に関しては、やり取りがなかった。
また、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の尖閣諸島(沖縄県石垣市)への適用や、北朝鮮の非核化、拉致問題解決に向けた連携も確認した。日米豪印4カ国の枠組み「クワッド」の協力強化することでも一致し、バイデン氏はクワッドに対する日本貢献を高く評価した。
さらに両首脳は、気候変動問題や新型コロナ対策など地球的規模の課題で連携することでも合意した。日本に対する新型コロナのワクチン供給について協力することで一致した。
首相は、バイデン氏が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰、世界保健機関(WHO)の脱退とりやめを決めたことを歓迎した。ワクチンを共同購入して発展途上国にも分配する枠組み「COVAX(コバックス)」への参加も評価した。
会談後、首相は公邸前で記者団に「前回以上にじっくりと実質のやり取りができた。バイデン氏との個人的関係も深めつつ、日米同盟の強化に向けてしっかり取り組んでいきたい」と強調した。