FILE PHOTO: Britain's Prime Minister Boris Johnson signs the Brexit trade deal with EU

FILE PHOTO: Britain's Prime Minister Boris Johnson reacts after signing the Brexit trade deal with the EU at number 10 Downing Street in London, Britain December 30, 2020. Leon Neal/Pool via REUTERS/File Photo

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英政府が2月1日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を申請した。

 

発足時の参加国以外で初めてとなる正式な参加の申し入れである。英国が加われば、TPPの経済圏は環太平洋地域を超えた広がりを持つ。

 

コロナ禍で世界の貿易が打撃を受けているだけに、英国の合流で自由貿易の推進を目指す意義は大きい。TPPが打ち出した高度な自由化や先進的な共通ルールを世界の標準にしていくことにも資するだろう。英政府の決断を歓迎したい。

 

日本は今年のTPP議長国である。米国の離脱後、残る11カ国の糾合を主導したのは日本だった。英国とも1月に経済連携協定(EPA)を発効させたばかりだ。英加盟交渉でも、これを牽引(けんいん)する指導力を発揮してほしい。

 

TPPは台湾や韓国なども参加に意欲をみせている。英国の加盟申請は、この流れが加速する呼び水となり得よう。併せて、米国と特別な同盟関係にある英国の動きを好機と捉え、バイデン米政権に復帰を促す布石とすべきだ。

 

欧州連合(EU)離脱で独自の通商政策が可能になった英国は新たな自由貿易の基盤としてTPP合流が必要と判断した。重要なのは、自由や民主主義などの価値を共有する欧州の大国が、TPP加盟国との経済的なつながりを深めようとしていることだ。

 

TPPには元来、軍事、経済一体で地域覇権を追求する中国と一線を画し、自由で公正な経済圏を確立する狙いがある。中国以外との関係性を強める英国の動きはこれと合致する。

 

中国は、日本も加わる「地域的な包括的経済連携(RCEP)」への署名を足掛かりに存在感を高めつつある。RCEPよりも高水準の自由化が求められるTPPの経済圏を広げることは、中国を牽制(けんせい)する上でも意味がある。

 

英国との交渉に際しては、中国がTPPへの参加意欲を示していることも念頭に置かなくてはならない。TPPには、国有企業の優遇を禁じるなど、中国には受け入れがたい規定がある。対英交渉で、基準を緩める前例を作ると、中国加盟に例外を設ける口実とされかねない。

 

英国との間でTPPの基準を順守することは、TPPを拡大していく上でのひな型になることを忘れてはならない。

 

 

2021年2月2日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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