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東日本大震災から間もなく10年。日本列島はあらゆる場所で大きな地震に見舞われるリスクをはらんでいる。政府は地震の発生確率などの予測を定期的に公表しており、仕組みを理解した上で活用できれば減災につながる。
地球の表面は十数枚の巨大な板状の岩盤(プレート)で覆われている。その下にあるマントルが地球内部の高熱によって対流している影響で、プレートはさまざまな方向に動き、互いに押し合ったり引っ張ったりする力が働いている。
太平洋プレートは南米沖に連なる海底山脈の海嶺(かいれい)からマントルが上昇することで誕生し、ゆっくりと西へ移動。日本に到達すると東北沖の日本海溝から陸側プレートの下に沈み込む。
ここでは、2つのプレートが押し合う境界部に膨大なひずみのエネルギーが蓄積され、限界に達すると境界部が一気にずれて巨大地震が起きる。これがマグニチュード(M)9・0の東日本大震災だった。
海溝沿いでは多様な地震が発生する。今月13日の福島県沖の地震は沈み込むプレートの内部で起きた。海溝の外側で発生し、大きな津波が生じる「アウターライズ地震」も懸念される。
プレートが引き金
こうした海溝型地震は北海道東部沖の千島海溝、関東地方の下にフィリピン海プレートが沈み込む相模トラフ(浅い海溝)、中部から九州沖に延びる南海トラフでも、ほぼ同じメカニズムで発生する。震源が浅い場合は津波を伴い、M8~9の巨大地震が起きると甚大な被害が生じる。
一方、陸側ではプレートが沈み込むことで圧縮する力が働き、岩盤の弱い部分が繰り返しずれて地震が起きる。これが活断層の地震だ。海溝型に比べれば規模は小さいが、都市の直下で起きれば被害は大きい。阪神大震災や2016年の熊本地震がこのケースだ。
政府の地震調査委員会は海溝や活断層の地震について、規模や発生確率を予測する長期評価を公表している。過去の発生間隔や直近の地震からの経過年数などを基に確率を算出し、毎年更新される。それぞれの地震が同じ間隔で繰り返すと推定できるのは、プレートがほぼ一定の速度で動いているからだ。
東日本大震災後に見直した長期評価によると、30年以内に地震が起きる確率は、千島海溝では根室沖のM8級が80%に達しているほか、M8・8以上の超巨大地震も最大40%と高い。日本海溝では東日本大震災型はほぼ0%だが、宮城県沖などのM7級が90%と非常に高く、警戒が必要だ。
相模トラフでは、首都直下地震を引き起こすプレートの沈み込みによるM7級が70%と高い。南海トラフはM8~9が70~80%と切迫している。
低い数値でも注意
これに対して活断層は見かけ上の確率が低い。海溝型は発生間隔が数十年から数百年なのに対し、活断層は数千年から数万年と長く、30年程度の確率だと小さい値になってしまう。
調査委は活断層で3%以上なら確率が高いと評価しており、阪神大震災は最大8%の時点で発生した。熊本地震はわずか0・9%で起きており、数字が小さくても油断は禁物だ。過去の活動がよく分からない断層では、数字が不確実なことにも注意する必要がある。
日本には約2千の活断層があるとされるが、調査委が評価したのは110余りにすぎない。確率が不明な断層や未知の断層でも地震は発生する可能性がある。海溝型でも沖縄地方に延びる南西諸島海溝の確率は、まだ分かっていない。
自分が住んでいる地域にどんな断層があるのか、地震が発生したらどの程度の被害なのかを想定し、日頃の備えに生かすことが重要だ。震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を地域ごとに示した全国地震動予測地図も手掛かりになる。
東京大の酒井慎一教授(観測地震学)は「情報をうまく活用し、一人一人が少しでも意識を持って行動すれば、より安全な国になる」と話す。
筆者:松田麻希、長内洋介(産経新聞)
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2021年2月28日付産経新聞【クローズアップ科学】を転載しています